……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-8
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土曜日。
相模原夏祭り当日、午前中から昼間にかけて小学生がはっぴ姿で町内をねり歩き「駄賃箱」と書かれたものに気持ちをいただいている。
町内のお年よりは孫たちの晴れ姿に喜び、子煩悩な父親はビデオカメラをもって並走していた。
「ふぅ、ひといきつこうか」
「はい」
今日も朝からヨーヨー作りに精を出している紀夫。そんな義理も昨日果たしたのだが、いつもどおりの理恵からの「オハヨーコール」の言い訳に使わせてもらうことにしたのだ。
「で、どう?」
「ええ、まあ、なんとかごまかしますよ」
「そうじゃなくて、里美ちゃんは?」
「里美さんですか?」
「昨日の話だと彼女の名前だけなかったし」
「はぁ……」
本当に気になるのはあの日、唇と一緒に気持ちを共有したあの子。
電話を期待していた弱い自分。誘えない自分。しがらみにとらわれる自分が嫌だった。
「里美さん、かぁ」
「電話したら? もうこうなったら五人だろうが十人だろうが変わらないわよ」
「そりゃそうですけど」
「むしろそのほうが楽しいよ。多分」
思い描いていた青臭い予定は二人きりで石段をあがること。
きっと彼女は浴衣姿。普段着慣れない着物に足をとられて躓く彼女。その手を引いて、ゆっくり時間をかけて境内を目指す。何も言えず、何も言わずに、ただ、二人で……。
しかし現実はオトコ二人とオンナ六人の大所帯。
理恵ならきっとお好み焼きを食べようと行列に行き、綾の性格を考えれば射的やくじ引きに向かいそう。規律に厳しい感じの美奈子はおそらく小言をこぼすだろうし、久恵は周りお構いなしに寄り添うと思われる。
稔や優がいたところできっと二人は二人の世界を作るだろうし、里美はおそらく……。
「楽しいっていうか、すごく疲れそう」
「じゃあ、私も行ってあげようか?」
「いえ、いいです」
相談に乗ってもらえたことについては確かに感謝しているものの、彼女が来ればきっと面倒なことになる。もしくはそうなるようにする人だ。
「にしても遅いわね。どこで道草くってるのかしら。それとも食べてるのかしら?」
「そういえばたこ焼きとかおいしそうでしたしね」
「そうじゃないわよ」
「?」
「おーっす、紀夫!」
紀夫が竹筒片手にヨーヨーを作っていると、元気の良い声が響いてくる。
「やぁ、綾さ……ん」
声を出そうとして逆に言葉を飲み込む。
現れた綾は黄色を貴重として赤の線の入った浴衣姿。胸元と左脚にかけて薄紅色の蝶が舞っており、彼女の長身だからこそ生きていた。多少気になるところがあるとすれば、やや裾が乱れているところ。これもおそらく着慣れていないせい?
「どう? 似合う?」
「うん。すっごく」
彼女が夜空を飛び交う蝶なら自分はそれに誘われる蛾のようなもの。もしくは彼女を獲物と見立てる蟻なのかもしれない。