……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-35
「そんなこと無いよ。ただ、君も背伸びしすぎ。だってさ、私たち、まだ十六じゃない。無理だよ。そんなにいっぱい背負ったりするの」
「だって、僕は君に頼られて、君を守ってあげたくて、力になれたら、少しは変われるかもって、だから、けど、やっぱり、それができなくて」
「君は私のこと支えてくれてたよ。気持ちの上ですごく楽になったし、もちろん、嫉妬もさせてもらったよ。けど、そういうの、全部大切な思い出なの。きれいなまましまっておきたい、だから、私……」
はだけた胸元に顔をうずめ、鼻水交じりに嗚咽を漏らす紀夫。その後頭部に落ちるしずく。二人は愛し合うことなど忘れ、ただ情で馴れ合った。
*―*
「花火、終わっちゃったね」
「うん」
先ほどまでは石段も帰る人でごったがえしていたが、それも引けると祭りの後の閑散としたむなしさが漂い始める。
神社の入り口、鳥居を少しくぐった程度の石段に座る二人は寄り添い、手をそっと重ねるだけ。
「ね、帰らないの?」
「里美さんこそ」
「私はまだここにいる」
「なら俺も」
「俺だって。さっきは僕だったくせに」
くすすとわざとらしく声を上げる里美に、紀夫はためいきのように笑う。
「僕か……。なんかさ、俺っていえば少しは強くなれるかと思ってたけど、やっぱりだめだったみたい。人ってそう簡単に変われないね」
「うん。無理だよ。だって全然イメージ違うもん」
「そっか、そうだよね。僕って、そういう感じだよね」
「うん。そのほうがいい。そのほうが紀夫って感じするし、無理とかいいやすい」
「なんでさ、頼りなくない?」
「使いやすい!」
「やっぱり使ってるんじゃないか」
「えへへ、ばれたか〜」
そういってもたれかかる里美。その肩に手を回すべきか迷う紀夫の手を、彼女はぐいと引き寄せて距離を狭める。
「ねえ、手紙」
頭の隅にかすかに残るアイテム。
差出人は不明。宛先も不明。ワープロ印字で気持ちも不明。
ただ、目的だけは分かる。
誰かと待ち合わせるため。
「手紙?」
しかし、彼女は目を丸くして首を傾げるだけ。
「うん。封筒に入ってた。てっきり香山さんだと思ってた」
「ふーん。そうなんだ」
そのリアクションに紀夫は自分の自惚れによる勘違いなのだと気付く。
「そういうのでも、よかったかな」
「え? なにが?」
「だから告白。っていうかさ君、もっとムード出してよ。なんかついでみたいに好
きって言われても嬉しくないよ」
「ゴメン。すごく焦っててさ」
自分でも何故あの場面で言えたのかわからない。けれど運命的な錯覚を感じたのも事実。きっと彼の脳内BGMには流行りのラブソングか、使いまわされた切なげなメロディが流れていたのだろう。