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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-26

*―*

 りんご飴のおいしそうな香り。射的の結果で一喜一憂する小中学生。楽しそうなカップルや高校生の男女のグループをかき分け、紀夫は急いでいた。
 特にその方角に求める人が居るわけでもなく、確証も無いというにもかかわらず、彼は急いでいた。

 ――里美さん!

 悟達の一件は公になるのだろうか? 少なくとも現代文の井口の知るところにあり、彼らの行為もなにかしらな形で罰せられ、監視の対象になるはず。
 それが彼女の抱えている潜在的不安を解消することに繋がるのかは一概に言えないものの、それでも事態は好転しているのだ。

 それを伝えたい。もう怯えなくて良いと。陸上に専念してほしいと。

 けれど、それでは自分はどうなるのだろうか?

 もとはといえば陸上部男子の面々の起こした悪事から彼女らを守るために入部させられた自分。理恵や綾ならおそらくこれからも良い関係を築いていけるのだが、他の部員にしてみれば異分子に他ならない。

 それに、里美とはどう接したいのか?

 ――それを、伝えるんだ! 俺が、俺と、里美さん。付き合ってくれって! 君を、支えたいから、何もできないかもしれないけど、でも、だけど、好きだからって!

 勢い付いた青春の一ページは加速度を増し、彼に成功願望だけを見せた。

 そして……、

「里美さん!」

 見つけた。
 今、一番会いたい人。
 他の誰でもない、まさにかけがえのない人。
 生まれて初めて、自分から求めたくなった好意。
 ぶつけたいと思った好意。その対象。

「紀夫……」

 彼女も自分を認め、おそらくは照れ隠しなのだろう、うつむいて下を見る。

「里美さん、聞いてくれよ。悟達、バカなことやって井口にさ、部室でのこととかばれたみたいだし、多分、これからはおとなしくなるよ。だから、もう怖がらなくても平気だって」
「そう」

 息をきらして報告する紀夫に対し、里美はやけに冷たい反応。

「だからさ、あと、俺、もしかしてもう陸上部に不要かな? なんてさ」

 少しでも関心を惹こうとおどけてみせる紀夫。

「でも、俺、里美さんに聞いてほしいことがあってさ」
「そう」
「俺、里美さんのことが好きだ。だから、付き合ってくれ」

 手持ち無沙汰な彼女の手をとり、自分を見てくれるように引いてみる。

「いや」
「え?」

 夏の終わりなら、それとも夜もふけてきたから? とにかく二人の間を一陣の風が通る。

「聞こえなかった? いやだって言ったの」

 耳に届く予期せぬ言葉。

「なんで?」

 すべてうまくいくと思うほど、彼ものんきではない。それでもキスの実績が彼に期待させていたのだ。

「なんでも……」

 彼女は右手だけ振り払い、左手で彼の手を引く。

「行こう。お祭り、終わっちゃうし」
「うん? うん」

 答えはノン。けれどイエスな祭りの夜のデート。
 とにかく、彼女の心模様が知りたい。
 そう思った紀夫は手を引かれる形で彼女の隣を歩くことにした。


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