……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-21
「稔? なに? なんのこと……」
水を向けられた優はなんのことかわからずきょろきょろと周囲をみるばかり。それでも稔が来たせいか、若干表情も柔らかくなる。
「オナニーだよ。お前とセックスすること妄想してチンコ握り締めてんだよ! こいつはさ!」
「いうなーっ!!」
握り締めたグーがへらへらした悟の横顔にクリーンヒット。
「は、はは……、お幸せに……」
振りぬかれたパンチによろめきながらも不気味に笑う悟が満足そうだったのは、せめて稔だけでも道連れにできたためだろうか?
「はぁはぁ……」
拳から血を流す稔。先ほどまで力強く握られていたそれはふるふると震え、何かにおびえているようにも見える。
祭囃子の裏での乱闘。同級生に怪我をさせただろう事実。
停学。もしくは退学。
それ以上に恐れているのは自らの消したい過去。
幼馴染に不埒な妄想を抱いたツケなのだろうか?
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「サトチン、大丈夫か? カズさんも……、ついでに、えっとそうだ、マネージャーだっけ? お前立てるか?」
「う、うぅ」
体格の割りに温厚な真吾は倒れている友人を見て回る。
和也は鼻血が止まったらしくティッシュで鼻の周りを拭き、紀夫も肩を貸してもらいながら立ち上がる。
稔の渾身の一撃を食らった悟だけはまだ恍惚にあるらしく、たまにうめき声がきこえる程度。
「まったく、あんた人殴って骨折るってバカじゃないの?」
興奮冷めて痛み出す右手は外灯の明かりに赤紫を見せた。
「そりゃないっすよ、先輩。俺だって必死だったんだし……、そうだ、優は? おい、優、怪我は? なんか酷いことされなかったか?」
自分の骨折もかえりみずまだ呆けたままの優の隣に駆け寄る稔。
「だいじょぶ。ちょっと浴衣よごれちゃったけど、平気。それに、三人からはなにもされてない」
「そっか、よかった。俺さ、お前の姿見えないからすっごい心配してたんだぞ? ど
うして連絡くれないんだよ」
痛む右手をかばい、左手で彼女の髪をなでようとする稔。
「やめて!」
けれどそれは優本人に払いのけられる。
「優?」
「私、ひどいことされてたっぽい」
「え、誰に」
「……稔……に」
うつむく彼女と目を見開く稔。
しばし時が凍りつくも、それもまた当然の流れ。