揺れる想い-6
「ごめん、ちなみ…ちょっと行ってくるね」
『あっ、うん…』
ちなみは急な出来事に、ポカンッとしたまま私を見上げていた。
先生が足早に歩くあとを、私が少し離れて付いて行った先は進路指導室だった。
私は、佑介から誘われた留学の話…前向きに進めてみる気になって、先生に資料の請求を頼んであった。
♯♯♯
『由里子に頼まれてたアメリカ留学の資料…さっき届いたから渡そうと思って。早い方がよかっただろ?』
「あっ…うん」
先生はそう言って、私の前にいくつかの分厚い封筒を並べた。
『由里子の今の英語力なら留学自体は問題ないし、この中の大学だったら、好きなとこ選べるレベルだよ!だいたいの絞り込みが決まったら、手続き進めるからまた言ってくれればいい…』
「ありがとう…」
『あぁ…頑張れ!』
先生が淡々と話を進めて、あっという間に用事が終わった。
私が重たい封筒を両手で抱えて、部屋を出ようとしたその時だった―――
『由里子…』
「ん?」
ふいに先生に呼び止められた!
『―――神木とはうまくいってんの?』
背中越しに、感情を押し殺した先生の声がした。