白銀のたまご〜パチプロチーコの生活2-3
この男と同棲する理由のひとつは実家が裕福だからというのもある。
最悪、食うには困らない。
シゲルったらね。
母様や姉様にはネットオークションの仕事で身を立ててるなんて言ってるのよね。
実際。
そんな仕事を立ち上げてはいるんだけれど、開店休業中も甚だしい。
たまに何かの間違いで十数万の発注があったりすると、俺は青年実業家だと嘘吹くし…
わずかな利益があったとしてもくだらないパチンコ攻略本に見入っていて無視してる。
この男にそんな才覚があるわけがないのよ。
私は母様や姉様じゃないし、ましてやシゲルの女じゃない。
財布の中身はすっかり軽くなっちゃったけれど、これで退散する決心もついたというもの。
… … … …
換金を済ませると一万円弱のプラスだった。
まぁ悪くないわ…
マイナスのまま帰る事に比べたら上出来よ。
[ チーコ… ]
後ろからかけられた声に振り返れば、そこにはシンちゃんが立っていた。
[ めずらしいわね
偵察にでも来たの? ]
白いジーンズに縁のないメガネ。
短い髪を赤く染めて、顎にだけヒゲを蓄えている。
私にとってこの人は師匠とも言える存在で、私のセオリイはすべてこのシンちゃんに教わった事に基づいている。
[ 勝ったか? ]
[ ダメよ…ヒキが悪くてさぁ ]
パチンコの大当たりには二種類ある。
まずは普通の大当たりで一回こっきり…
私たちはこれを単発といい、もうひとつは確変といって終了後に玉の消費を抑えるモードに切り替わって、早期に次の大当たりが約束される。
これらは大当たり時に2分の1の確率で抽選されるのよ。
それで、ヒキが良いというのはいかにこの確変を継続して当てるかという事なの。
たしかにこの日は辛うじて、収支プラスにはなったものの、単発を繰り返してヒキはよくなかった。