想-white&black-J-7
屋敷に到着してみると何だか懐かしいような不思議な感覚に陥った。
離れていたのはたかだか一週間程度だったはずなのに、もう何年もここに来ていなかったような気がする。
「お帰りなさいませ」
再び楓さんに腕を掴まれながら中へ足を踏み入れると、エントランスには理人さんと瑠海さん、瑠璃さんが揃って待っていた。
「あ……」
みんなの姿を認めると、黙って逃げ出してしまった手前の気まずさと迷惑をかけた申し訳なさに思わず目を伏せる。
一番に謝らなければと思っていたのに上手く言葉が出てこない。
「花音様……」
双子のどちらかは分からなかったが、安堵と複雑な感情が入り混じった声で名前を呟く声が聞こえびくりと肩が震えた。
一体どんな顔で自分を見ているのかと思うといたたまれない。
そんな私の様子が掌越しに伝わったのか、楓さんが口を開く。
「瑠海、瑠璃。お前達は花音に茶を用意して持って来い。理人と一樹はしばらくの間を頼んだぞ」
その言葉を耳にして顔を上げてみると、双子の表情が一瞬強ばったような気がしたが、すぐに一礼をしてキッチンのある方へと姿を消した。
理人さんと一樹さんも何やら言いたげな顔をしていたが、それを口にすることはなかった。
「花音。お前はこっちだ」
手加減もない、力任せに引っ張られ肩や腕が痺れるように痛んだ。
「か、楓さん、痛……っ」
反射的に痛みを訴えてしまったが、ちらりと視線を寄越しただけで何も言ってはくれない。
長い脚が歩く早さについて行くのが精一杯で、半ば引きずられていると言った方が近いかもしれない。
廊下を突き進んだ先は楓さんの部屋だった。
そこには見慣れたはずの整然とした部屋があるはずだったが、その光景を見た瞬間言葉を失ってしまった。
「な、に……?」
楓さんの部屋はまるで空き巣か何かが入ったかのように荒らされており、家具やらテレビやらが倒れ様々な物が散乱し所々壊れているようだった。