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想-white&black-
【女性向け 官能小説】

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想-white&black-J-6

「ッてぇ……。思いっきり殴りやがって」

麻斗さんは殴られた頬をさすりながらふらつく身体を起こすと、そのまま地面に座り込む。

「あ、麻斗さんっ」

思わず立ち上がって駆け寄ろうとすると、腕に痛みが走り身体を引き寄せられた。

驚いて振り向くと楓さんが私の二の腕を強い力で掴んでいる。

「お前はこっちだ」

「楓さん……」

視線が絡まり合う一瞬の間の後、楓さんは私の腕を掴んだまま麻斗さんに背を向けて歩き出す。

麻斗さんのことが心配でたまらなかったが、抗うことを許さないといった楓さんの無言の圧力と、再び再会したショックで混乱したまま為す術がない。

「待てよ、楓」

この場を去ろうとした楓さんに麻斗さんが声をかけてきた。

その声に楓さんは足を止める。

「今回は確かに俺がそそのかしたけど、花音がそれに応えた意味を考えろ。もしまた次に花音が俺に助けを求めるようなら……。今度は俺も本気でいくからな」

挑戦的な言葉に楓さんが返事をすることはなかった。

だが再び歩き出す楓さんの手は私の腕を更に強く握り締めていたのだった。


「出せ」

楓さんが低い声で指示を出すと、放り込まれるようにして乗せられた車はさっさと遊園地を後にした。

車内は押しつぶされそうな重苦しい沈黙が支配し、隣に座る楓さんの威圧感に顔を上げられない。

そんな空気の中、運転席にいた保坂一樹さんが口を開いた。

「花音様、よくご無事でいらっしゃいました。皆、花音様のお身体を案じておりましたよ」

「一樹さん……。すみません、ご迷惑をおかけして」

彼の静かで穏やかな声色に少しだけ緊張がほぐれ、謝罪の言葉を口にするとバックミラー越しに優しげな眼差しと首を横に振ってくれたのが見えた。

一樹さんは楓さんの数少ない側近の一人で年齢は二十代後半といったところだろうか。

私が彼と顔を合わせるのは車に乗るときが多い。

専属の運転手と護衛を務め、理人さん同様幼い頃から楓さんとは兄弟のように過ごしてきたと聞いた。

明るく朗らかで、私に対しても嫌な顔一つせず快く接してくれた優しい人だった。

「謝ることなどありませんよ。迷惑だなんて思っていませんから。それは楓様だって同じです。ねえ? 楓様」

様子を窺うように横目で確認したが楓さんは黙ったまま何も言わない。

ただまっすぐ前を見据えたまま私達の会話を聞いている。

「どちらにしても俺が口を挟めることは何もありません。あとはお二人で話し合われることが大事でしょう」

「……はい」

消え入りそうな声で俯くと車内にはまた沈黙が戻ってきた。

そうして屋敷に到着するしばらくの間、私達の間には何一つ言葉が発せられることはなかった。


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