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お江戸のお色気話
【その他 官能小説】

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お江戸のお色気話、その4-1

(4)

長屋の住人達には、
(これぞ!)というような趣味を持っている者は少ない。

精々、囲碁や将棋、双六といった金の掛からないものを遊びとし、
濁酒などの酒をキュッと引っかけ、赤い顔で肴をかじりながら、
縁台に腰を下ろしては、興に乗りながら駒を進めていた。

そして子供達と言えば、
近くの川で釣る(魚釣り)や、泥鰌掬いだったりした。

当時、寄席は人気があったが、足を運ぶのには金がかかり、
裏長屋の住人には、それを楽しむような余裕はない。

長屋の人たちの中には、暑い夏の夜、中々寝付かれない人が多い。
蚊や虫が飛び交う中で蚊帳などを吊すが、それでも
蒸し暑く、暗く長い夜をどう過ごすかが悩みの一つでもある。

そんな時には、長屋の住人達は、
たまにある、話し好きな老人の講釈を聞くのが楽しみだった。


今の時代のような、涼しさを駆使する道具も術もない時代では、
団扇や扇子を仰ぎ、庭に水を撒いたりして涼をとっていた。

長い夜を過ごすには灯が必要であるが、
蝋燭は高級品であり、庶民には手が入らなかった。
その為灯油を使い、菜種油は広く使われたが、
当時は高価であり、貧乏人はその半値くらいの魚油を買っていた。

魚油は、燃やすと匂いは少々臭いが、我慢すれば何とかなる。
しかし照明効果はあまり期待できず、暗いのだが、
逆に、講釈時にはそれがかえって妖しい効果を醸し出していた。


さて、そのような背景の中で、
いよいよ、金吉の話は核心に入っていく。


「それから、あたしは奥方と抱き合って繋がったまま、
奥方を抱きかかえながら上体を起こし、
後ろへ反ったんです、
すると、奥方はずずっとばかりに、
あたしの上に乗っかる格好になりましてね、激しく穴に刺さるんです」

それを聞いていた老人は、目を輝かしながら言った。

「ほぉぉ・・するていと、女は寝そべった金吉の上に、
乗っかった格好になるのじゃな、繋がったまま、金吉や・・」


「へえ、そういう訳でして・・そうすると、女が言うんです」
「ほお、それは何と?」

老人ばかりでなく、皆はその奥方が何を言ったのか知りたくて
聞き耳を立てていた。

彼らにとっては元とはいえ、格の高い武家の奥方の
こういう秘め事を知ることに、異常なほど興奮を憶えるようである。


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