身代わりの果て-1
10月―――
―――ここは学校の屋上
突然『話がある…』って、彼氏に言われたときは、大抵いい話じゃない。
言われた方は、悪いことした覚えもないのに引け目を感じちゃったりするし…
24年間生きてきた中で、1度経験して1度経験させたけど、どちらの時もあまり気持ちのいいもんじゃなかった。
おまけに、あの冷や汗かくような緊張感は心臓にも悪い!
それがまた、私の目の前で…起ころうとしてた。
その相手は佐々真司…それが私が2ヵ月前から付き合ってる彼の名前だ。
♯♯♯
彼と出会ったのは半年前…
赴任してきた今の学校で、私が初めての担任を持った時、彼とは年が近いこともあって何かと相談にのってもらった。
彼は最初、人を寄せ付けないオーラを出しまくりで、すごくとっつきにくい人だった。
それでも話をしてみると、口数は少ないけれど公平で的確なアドバイスくれる人だと分かった。
そして彼が無愛想に見えるのは、自ら好んでそうしてるわけではなくて、不器用な性格からくるものなんだってことも…
出身大学が偶然一緒だったり、お互い数学専攻だからってこともあり、除々に親近感を覚え、気が付いた時には彼のことをスキになっていた。
そのうち彼からも気さくに話し掛けてくれるようになって、仕事帰りにご飯食べに行ったりする仲になった。
それはあくまでも同僚としてで、彼に特別な感情がないことは分かっていたけど、それでも私に気を許してくれたことが嬉しかった。
だから、スキだって気持ち…伝えるつもりはなかったんだ。
でも…気になるあの子のことで彼が悩み始めた時、状況が変わった。