やっぱすっきゃねん!VK-16
「もう止めましょう。ボクが親に頼みますから」
必死に頭を下げる修の姿に、直也が先に視線を切った。
「クソッ!帰りたいヤツはとっとと帰れッ。オレはひとりでも探すからな」
大見得を切る直也に対し、達也はクスリと笑うと、
「まあ、明日の練習には遅れないようにな」
そう云ってその場を立ち去った。
「うっとうしい奴…まあいいや、残った人間で佳代を捜しにいくぞッ」
「すまん。オレも帰らせてもらうよ」
達也に続いて淳も帰って行った。すると、他の6人も“すまん”と云い残して次々と続くでないか。
「この薄情もーーんッ!おまえらなんか、もう仲間じゃないからなッ」
直也は離れていく仲間に対し、考えつく限りの悪口を云い放つ。
「修、あんな薄情なやつらが居なくても、2人で捜すぞ!」
悔しさに反発する直也。だが、修は再び頭を下げた。
「直也さんの気持ちはありがたいです。でも、もう止めましょう。ありがとうございます」
「で、でもなあ」
「でも、ボクも明日のことを考えて欲しいんです」
「おまえ…」
直也は、意外とも思える顔で修を見た。
「直也さんはチームのエースです。姉ちゃんとは違うんだから」
そう云った顔は、わずかに微笑んでいた。精一杯の作り笑顔。そんな顔をされては、直也は何も云えない。
「分かったよ。何か分かったら知らせてくれ」
「ありがとうございますッ!見つかったら直ぐに連絡します」
修は何度もお礼を云って帰って行った。その後ろ姿を見つめる直也の顔に苦笑いが浮かんだ。
「…アイツ、いっぱしの口利きやがって」
そう呟くと自宅へと戻って行った。
修が自宅に着いた時、空は朱色から薄暮に変わりつつあった。
「…ただいま」
ため息混じりで玄関を潜ると、奥から音が聞こえる。夕食の準備の音だ。
「あら修。ずいぶん遅かったわね」
加奈はキッチンに現れた息子に気づいて声を掛ける。
今朝と変わらない無関心な言葉。修は、そんな態度を恨めしく思った。
本当なら、事情を説明して警察への捜索願いを頼むべきなのに。
「別に…ちょっとね…」
冷蔵庫の麦茶を飲んで自室に向かおうとしていた。すると、加奈のとなりにいる健司が訊いた。