浦島太郎-7
ガリッ。
口を見えない何かで塞がれた女の、声にならない悲鳴が喉の奥で燻り、首筋に走った激痛を解放させるかのように激しく手足をばたつかせた。
痛みで意識が遠退き始めた女の視界に、くっきりと浮かび上がる赤い塊。
それが自分の肉片だというのに考えが辿り着く前に、女の意識は遮断された。
最後に女の瞳に写ったのは赤い塊。
そして、それをくわえて下卑た笑いを称える、赤く浮かび上がった口だけだった。
男は、あの時の興奮を忘れられず、何人もの人々を襲い続けた。
テレビや新聞では、巷を恐怖に苛ませている連続暴行殺人犯の事で持ちきりだ。
全くと言って良い程手掛かりが掴めない。
目撃情報もない。
しかし、人は死んでいく。
警察も、八方塞がりといった状況だった。
それは無理もない。
男は見えないのだ。
どうする事も出来やしない。
ふっ、ふふっ。
男が小さな笑いを零した。