投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

浦島太郎
【ホラー その他小説】

浦島太郎の最初へ 浦島太郎 5 浦島太郎 7 浦島太郎の最後へ

浦島太郎-6

…まさか。



男はわざと人にぶつかってみた。



結果はさっきと同じだった。



男の疑問は確信に変わった。



見えていない。



こいつらに自分は見えていないのだ。



つまり、存在していないも同じ。



自然と男の口角がいやらしく吊り上がった。



繁華街から人通りの少ない路地に移動した男は、通りかかった一人の女の腕をがしりと掴み、そのまま砲丸投げのように遠心力で女を塀に激突させた。



何が起こったのか理解出来ていない女に追い打ちを掛けるように、男の踵が女の肩へと落下する。



関節の外れる音が、静寂の路地に木霊した。



女の悲鳴は響かない。



即座に男の手で口が塞がれていた。



恐怖で瞬き一つも上手く出来ない女の瞳に、男は優しく唇を落とす。



恋人を宥めるかのようなその行為は、何も見えない女にとってしてみれば、恐怖以外の何者でもない。



瞳に落とした唇を、だんだんと下降させて下へ下へと滑らせていく。



鼻を通り頬を通り、首筋へと持っていく。



カタカタと震える女の振動が、唇から男へと伝わり何だか心地が良い。



ニヤリと男は不敵に笑う。


浦島太郎の最初へ 浦島太郎 5 浦島太郎 7 浦島太郎の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前