浦島太郎-5
日付。間違いない。
が。
男は絶句し、目を見開いた。
50年。
男が生きていた時より、此処は50年も経過していた。
そんなに長い時間を彼処で過ごした覚えはない。
そもそも、彼処に居たことすら、今では夢のように思えてならない。
どうなっているんだ。
まるで、童話の世界のようだ。
そう、まるで、浦島太郎。
どんっ。
座り込む男に衝撃が一つ。
誰かが男にぶつかった。
ぶつかった男性は辺りをキョロキョロと見渡し、一度首を傾げてからその場を立ち去った。
男は若干の怒りと疑問を頭に浮かべて、ぶつかった男性に声を掛けようと立ち上がる。
どんっ。
別の男性がまた男にぶつかる。
その男性も又、辺りを見渡した後に、何も言わずに去っていった。
どういう事なんだ、どいつもこいつも。
ぶつかったのなら、謝っていけばいいものを。
しかし、先程からの奴らのあの態度はどうもおかしい。
まるで、自分が見えていないかのよう。