メルファ・人形残酷(?)物語3-6
「キディ…」
キディの様子を、誰かが物陰から見ていた。
マルシアでもジャックでもない、第三者だ。
今すぐにでもキディを助けてあげたいけど…
下手に動いたら、メルファに気付かれてしまうから迂闊には手が出せないのだ。
我が子の苦しみなんか気にも止めず、メルファはディックとの電話に夢中だった。
「メルファ、そろそろ結婚しねえか?」
ディックの意外な言葉である。
「マァ、結婚?」
「オレの方も大体落ち着いて来たし、いつでもお前と一緒に暮らしたいと思ってるんだ」
「嬉シイワ。アナタト、結婚出来ルナンテ。
マルデ、夢ノヨウ」
「問題はガキだな?
お前んトコ、30体もいるんだろう?」
「数ハ多イシ。馬鹿バッカリデ」
何て母親だろう?
「適当ニ、イイノヲ選ンデョ、後ハ棄テルカ殺シチマエヨ?」
随分と残酷な事を平気で言う男人形だ。
何とメルファは…
表情変える事無く、淡々とした口調で言った。
「イイワ。ディックノ、判断ニ、任セル」
「むさ苦しい人間どもの所から離れてよ、オレたちだけで暮らしてえ。
ガキなんて、ほんの少しで十分だ」
後日、ルーシーはクルー邸を訪れた。
久しぶりに見る旧友にメルファは大喜び。
「サァ、遠慮セズニ入ッテ来テ」と、ルーシーを部屋に招き入れる。
「お邪魔しまーす」
ルーシーは興味津々で中へ入って行った。
その様子を、マルシアやジャック、スザンヌたちが隣の部屋から伺っている。
ルーシーはメルファが目を離しているスキに懐のボタンを押した。
超小型の隠しワイヤレスマイクを忍ばせているのだ。
ルーシーとメルファの会話はこのマイクを通じて、マルシアたちのいるスピーカーに流れるようになっている。
2人の間ではどんな会話が行われるのか、マルシアたちは聞き耳を立て始めた。