「瓦礫のジェネレーション」-1
第一章 「宴」
河川敷の駐車場に停められた数台の車と、その倍ほどの数のオートバイ。円環形に停められた車の間で、廃材が燃やされていた。
焚き火の火に照らされて、女性の股間に跪いている男の姿が見える。車のボンネットに腰掛けた女性の肩を、精悍な男がふたり、両側から支えている。
長いストレートヘアの女性はなにかを考えているように目を閉じているが、かなりの美形。年は二十歳を少し超えたくらいだろうか。上半身には黒のレザージャケット、脚にはブーツをはいたまま、下半身だけを外気にさらしている。
その股間に顔を埋めている男は、女ふたりにうしろから腕を掴まれている。場にいる他の十数人は環になってまわりを取り囲んでいる。彼等が全て黒のレザーに身を包んでいるのに対し、彼だけがジーンズにスウェットというスタイルだった。見たところ、18、9歳といったところだろう。
少し離れたところでは淡い水色のブラウスに紺のスカート姿のやはり18、9の女性が、男ふたりに腕を掴まれている。
「さっさとやんなさいよ」
跪いた男に向かって右腕を掴んでいるやや太り気味の女から叱責の声がとぶ。
「あんた運がいいわよ、美咲さんに奉仕できるなんて」
左腕を掴んでいる背の高い女が笑いながら言い、男の肩をぐいと前に突き出した。男の顔は自然に、ボンネットに腰掛けた女性の股間に埋められる。男は観念したように美咲と呼ばれた女性の秘部に舌を伸ばす。
美咲はわずかに息を荒くしながらも、相変わらず目を閉じて何かを考えているような顔をしている。
1時間前。ファミレスで食事を取っていた川上拓也と加納かおりのふたりは、駐車場から車を出すときに、運転を過って隣に停まっていた美咲の車に大きな傷をつけてしまった。動転して逃げようとしたところを、美咲と一緒にオートバイで来ていた葉子--太り気味の女--に追い掛けられ、この河川敷に追い込まれたのだ。葉子の連絡で河川敷に集まったのは、美咲のグループのメンバー十数人。
車の中でぶるぶる震えているふたりは、屈強な男達に引き摺り出された。
土下座して謝り、
「罰なら僕が受けますから、彼女には手を出さないでください」
と言った拓也に、美咲が出した条件は
「10分以内で私をイカせられたら、許してやってもいい」
というもの。
葉子と尚美--もうひとりの背の高い方--は顔を見合わせて、
「まったく、美咲さんも気紛れというか物好きというか意地悪というか……」
と苦笑した。
まだ女性経験のない拓也は、本やビデオから得た知識だけで懸命に美咲に舌での奉仕をする。腕を両側から掴まれているせいで舌以外を動かすことができない。ぎこちない舌使いでなんとか美咲を感じさせようと努力はしているのだが、その部分はわずかなぬめりを生じただけで、美咲の表情にもほとんど変化がなかった。拓也の方は、最初のうちこそ恐怖に畏縮していたが、異常な状況に興奮したのかいつの間にか股間がジーンズの上からもはっきりわかるほどに張り詰めていた。
「美咲さん、もう10分たちましたよ」
環の中のひとりの男が、そう声をかけた。
美咲は目を開くと、冷ややかな声で
「じゃ今日はここまでね。私はこれで帰るけど、その女の子は連れてきて」
と言い、ボンネットから降りようとした。その時拓也が、掴まれていた両腕をふりほどいて美咲に飛び掛かろうとした。すかさず両側にいた男に捕らえられる。
「ばかね、あんた身のほど知らずだわ、美咲さんを襲おうなんて。あーあ」
葉子は笑いながら
「この子も連れてきますよ、美咲さん」
と言った。美咲はレザーパンツを身につけると
「好きにしなさい」
と言って車に乗り込んだ。