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「瓦礫のジェネレーション」
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「瓦礫のジェネレーション」-44

「市丸さん、社長がお呼びです」
ムシャクシャした気分のまま席に戻ると、秘書課の女から伝言を告げられた。
(くそっ、俺の知らないところで一体なにが起きてるんだ)
市丸が社長室に入ると、そこには塩飽社長とともに輿石岳人がいた。
「初めまして、ですかね、市丸さん。輿石岳人と申します」
「こちらこそはじめまして。輿石、とおっしゃると民政党の……」
「いえ、今日は別に議員秘書として来ているわけではありませんので」
「そう、今日は娘の兄がわりってことで来てもらっている。市丸、私に何か言うべきことはないか?」
「お嬢さん……美咲さんのことでですか?いえ、私には特になにも……」
「ならば私が言って差し上げましょう。残念ですね、市丸さん。美咲ちゃんも塩飽コーポレーションも貴方のものにはなりませんよ」
(……なんだと?どうしてこの男がそんなことを……)
「どういう意味でしょうか?おっしゃってることがよくわからないんですが」
「往生際が悪いぞ、市丸。お前が美咲を誑し込んで次期社長の座を狙っていることは調査済みだ。それを手みやげに江口組に取り入ろうとしてることもな」
「その件では先程、江口組長ともお話がついたところですけどね、市丸さん」
(くそっ……さっきの電話はそういうことか……しかしこっちには美咲と関係を持ったっていう既成事実がある。それをぶちまければ輿石だって……)
「いや、輿石さんもご存じないことがあるんです。社長、大変に申し訳ありません。私、美咲お嬢さんとは既に男と女の関係になってしまったのです。いずれ美咲さんの方から社長にお話していただくつもりだったのですが……本当に申し訳ありません。もちろん、いい加減な気持ちではありません。責任は取らせていただきます」
塩飽誠はたじろいだ。遅かったか。娘は既にこの男の毒牙に……。
「岳人くん、これは……この前、美咲にはもういい人がいると言っていたのは、まさかこの男のことじゃ……」
「まさか、ですよ、おじさん。安心して下さい、そいつの人間は保証しますから、こんなたわごとに惑わされないで下さい。それより今は市丸さんの話でしょう?」
平然として話をする岳人の態度に市丸は恐怖を感じた。
(こいつは一体どこまで知っているんだ……?)
「そうだったな。とにかく、お前は馘だ、市丸。他にも背任行為がいろいろ見つかったが、これまでの功績に免じて懲戒解雇ではなく依願免職にしておいてやる」
市丸はガックリと肩を落として、社長室から出ていった。

陸が康浩とともに美咲のマンションに到着したのは夕方の4時を少し回ったころだった。
美咲のマンションでは、暴走した葉子の行動によってかおりが囚われ、そこへ助けに入った健志がうちひしがれているところだった。傷心の健志がかおりを送っていった後、残されたメンバーは葉子の処分について話し合うために美咲の帰りを待っていた。
そこへ葉子の携帯が鳴った。
「あ、あの、ちょっと……」
うろたえる葉子の携帯を康浩がとりあげる。液晶画面には「市丸」の文字。
「お前……葉子、市丸と……?」
「……いいじゃないのよ。誰も、誰も構ってくれなかったくせに……」
葉子は携帯を奪い返し、そのまま部屋を飛び出す。
半時間後、美咲が駆け込んできた。
「陸、陸、大至急家へ電話してっ!岳人さんが刺された!」


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