「瓦礫のジェネレーション」-16
少しの間、幸福感に身を委ねていた美咲を現実に引き戻したのは陸だった。
「……で、その浩一って男はどうする?あいつらみたいにかっさらって来て二度と女抱けないようにしてやってもいいんだけど、それだけじゃ気が済まないだろ?」
陸の言葉に、美咲の中で前日の浩一の言葉がフラッシュバックした。レイプされて身も心も傷付いている美咲を、「浄めてあげる」と言って犯した男。それだけでも許せないのに、自分が美咲を捨てることをさも美咲のためであるかのように正当化した卑劣な男。
卑劣な男には屈辱的な制裁が相応しい、と美咲は思った。
「なにか、うんと人格をズタズタにするような、屈辱的な目にあわせたい」
美咲の呟きに、陸は少し考え込んでから、うなずいた。
2週間後、美咲にとって忌まわしい思い出の場所となった湖畔に、若い男が木の根元に後ろ手にしばりつけられていた。脚を前に投げ出し、首からは「ご自由にひもをお引き下さい」と書かれた札をぶらさげていた。むき出しの股間にはペ○スが力なく垂れ、尿道口からはたくさんの結び目のついた細い紐が出ている。
通りがかりの少年がイタズラに紐を引くと、男はわけのわからないうめき声をあげてどろっとした精液をこぼした。男の目は焦点が定まらず、口からは言葉にならないつぶやきがもれるだけだった。
偶然この場所に立ち寄った中年夫婦の通報で警察に保護されたものの、本人からの事情聴取は全くできず、身元を証明するものも何も持たなかったため、警察としてもそれ以上はお手上げだった。行方不明になった息子を心配した両親がその変わり果てた姿と対面できたのは、さらにずっと後になってからのことである。