「僕らのゆくえ 7(時子)」-1
はあ―…。
…マズい。熱、上がってきたかな。
学校にいるときも、少し熱っぽかったものの、そこまで体調は悪くなかった。
しかし、帰宅すると途端に悪化してきた。
何とか、2階の自室に辿り着き、制服のままベッドへ倒れこむ。
階下から電話の音が聞こえてきたように思うが、取りに行く気力もなかった。
いつも、4人で過ごしている家に今日はひとりだけ。
驚くほど静かだ。
微かに、冷蔵庫のブーンという音が聞こえる。
その音はなぜか、私の不安を煽った。
喉がからからで、冷たい水が飲みたかったが、起き上がるのも億劫だった。
荒い息をつく。
どうして、病気のときって人恋しいのだろう。
―千比絽は、今頃、友達の家だろう。
会えるのは、明日か。
いや、今日は金曜日だから、明後日かもしれない―。
「…千比絽」
小さく声に出して呼んでみる。
無性に、千比絽に会いたかった。
あの、射るような眼差しに見つめられたい。
柔らかい、黒髪に触れたかったし、大きくて、長い指の手を握ってもみたかった。
ああ。
そうなのだ。
朦朧とした頭で、天啓にうたれたように、気付く。
私は、千比絽のこと―。