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「僕らのゆくえ」
【幼馴染 恋愛小説】

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「僕らのゆくえ 6(千比絽)」-1

俺はズルい。

何も知らない時子に、自分の本当の気持ちを隠して。
隠しているくせに、気付いて欲しいとも思う。


もう、「姉」とは思っていないくせに、一緒にいられるならと、偽って繕って姉弟の関係を保とうとしている。


分かっている。
卑怯だってこと。



でも、これから先は?

時子だって今に彼氏を連れてくるようになるだろう。

その時俺は、「弟」として紹介されるのだろうか―。


「…千比絽!」

友達の声ではっと我に返った。
思索の海を漂っていたらしい。

「どーしたんだよ。ぼうっとして」

「悪い」


時子と二人切りの家にはとても帰れそうになく、宣言通り、友達の家に遊びにきていた。

今日は金曜日だし、このまま泊まらせてもらうつもりだ。

プレイ中のサッカーゲームは、俺がぼうっとしていたせいで、相手に2点ものゴールを奪われていた。

友達の佐藤が、怪訝そうに俺の顔を覗き込んでいる。

「どっか悪いのか?」

「・・・いや」

今朝の時子の様子が頭を離れない。

時折咳き込んでいた時子は、顔色も優れなかった。

俺に傘を置いて行ったので、あの雨の中、ひどく濡れて帰ったに違いない。

さっき、携帯から自宅に電話を入れたが、呼出音が流れるばかりで繋がらなかった。

19時を回っており、時子はとうに帰宅しているはずだが―。

俺は不安になって、立ち上がった。

「―悪い。やっぱ、帰るわ」

「え?おい、千比絽」

どうした、と言う佐藤の声を背に、俺はもう振り向かず、駆け出した。
何故か、胸騒ぎがした。

―どうして、時子ひとり切りにしてしまったのだろう。

自分のことしか考えることのできない、自分に腹が立った。


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