天使のすむ場所〜最後のドライブまで、あと〜-1
もし、自分の命があと一年だって気づいてしまったら。
それでもし、自分に守りたいものがあって、愛している人達がいたら。
そんな人達を置いて、逝く俺は最低の人間かもしれない。
「直人?!」
美香が俺の右肩を揺さぶって、俺はようやく目が覚めた。うわっ、汗びっしょりだ。
俺は病室のベッドの上で、まるでサウナの中にいたのかってくらい汗をかき、だるさに襲われていた。どうやら、痛み止めの薬を飲んで、しばらく眠っていたらしい。夢の中でうなされていた俺を心配してか、美香が起こしてくれたみたいだ。
「直人、大丈夫?すごいうなされてたよ。」
美香が今にも泣き出しそうな顔で俺を見つめる。冷たいタオルで、額につく髪を拭ってくれた。左手の薬指が光る。それは、黄金色に輝いていて、美香の白くて細い指にとてもよく似合っていた。
「ん。大丈夫、ありがと。」
そんな美香の左手をとって、自分の口元に運び、手の甲に口付けた。なんか、触れたいって思ったから。
「ちょっ・・・なぁに?急に、どうしたの?」
美香が照れて、困った様にはにかむ。そんなの無視して、舌を這わせる。一瞬、美香が震えた。
「直人っ・・・看護師さん来ちゃうよ?」
小声で美香が囁くが、それも無視。今は病室はがら空きで、4人部屋なのに2人しか入院していない。向かい側に入院している小沢の爺さんは「ちょっくら気晴らししてくるわ。」といいながら、もう3泊くらい外泊している。(入院してる意味あんのかな?)
俺は美香の手首を少し強く引っ張ってみた。そしたら、美香は体勢を崩し「きゃっ。」と小さく声をあげて、ちょうど俺の胸の上に顔が乗った状態になった。二人の視線が絡み合う。その瞬間を逃さない俺。美香の後頭部を左手で抱き寄せ、強引に唇を合わせた。
「んっ・・・。」
美香の口腔内は、ちょうどさっき食べたらしいメロンの後味がした。たくさんの美香の蜜を丁寧に舌ですくい、飲み込む。歯列をなぞると、美香の身体がビクンと動く。・・・美香の中を、俺でいっぱいにしたくなる。
「直人っ!ダメだよっ・・・もっ・・ふぁっ・・・んっ・・・。」
「もうちょっとだけ。美香・・・。」
自分の中で、一番甘いだろうって思う声で美香に囁く。左手で美香の頭を、右手で腰を引き寄せ抱きしめるようにキスをする。
「直っ・・・これ以上したらっ・・・。」「・・・はっ、なにっ?」「んっ・・・だめだってばっ・・ばかっ・・・我慢できなっ・・・。」「できなくなっちゃえ。いいよ、我慢しなくて。」
美香の吐息が、俺の思考回路をダメにしてくれる。悪夢なんかよりも、こっちのがいい。美香が酸素が足りないっていう顔して、息があがって、でもそれが色っぽいって・・・お前わかってんのかな?歳が30超えようが、子供が二人いようが、俺は美香が好きだった。年々綺麗になるって思う。それは、外見だけじゃない。妻になって、母親になって、より一層女があがった。色気なんか、もうどこから出てくるんだよってくらい・・・俺を惑わす。誰にも触らせたくない。俺だけのもので居て欲しい。でも・・・