メルファ・人形残酷(?)物語-8
「泣カナイノ、泣カナイノ。ゴメン、ゴメン!」
賑やかな声は、部屋の外まで聞こえて来る。
「何なのかしら?
さっきまでの態度とは大違いじゃないの」
マルシアは複雑な気持ちで立ち聞きしている。
電話をかけに行ったジャックが戻って来た。
「中の様子はどうですか?」
「とっても賑やかよ」
「メルファの様子は?」
「優しいママって感じネェ」
「レレを踏み潰した時の冷酷な態度とは、大違いなんですネェ」
「人形協会は何て、言ってるの?」
「世話係のスザンヌの説明では…、メルファのようなタイプの人形は、自分の子供を守ろうとする強い母性反応が働くようですネェ。特に、初めて子供を手にした頃は、周りへの警戒感が強くなって…誰とも口をきかなくなるとの事です」
「じゃあ、さっきの行為は何だったのかしら?
自分が守るべき我が子を、いとも簡単に踏み殺してしまったのよ」
「子供を勝手に触られたって言う、怒りと警戒感の表れじゃないか?
協会の方はそう、見ているみたいですよ」
「だとしたら、子供たちには迂闊に触れないわネェ。注意しないと又、子供が殺されちゃうわ」
「長くても、半年ぐらいは注意した方がイイでしょう。そのうち段々と、メルファの方から心を開いてくれるらしいから」
「そう、なってくれたらイイんだけど」
気持ちがスッキリしないマルシア。
傍のテーブルの上には、踏み潰されたレレが白い布に包まれて置かれてあった。
既に…
息はしていない。
母親と言う人形の愛に触れる事もなく…
他の子供たちと楽しく過ごす事もなく…
1人寂しく死んでしまったのだった。
可哀想に…