……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-60
「のり……紀夫君? だい……じょうぶ?」
覆いかぶさる彼を拒むことなく、その背中に腕を回し、先ほどされたように髪を撫
で、あやし始める。
「俺、先輩の……すごく良くて……」
小刻みに震える彼はカクカクと腰を揺らし、その度に期待していた分の欲望を吐き
出す。
「そう? そんなに……」
「だって、先輩、俺のこと……」
「俺のこと?」
――愛してくれたから……。
口に出してはいけない言葉。きっと言えば裏切りになる。自分に対しても、想う誰
かに対しても……。
「すみません、眠くて……」
「うん。大丈夫だよ……朝まで……一緒に……」
訪れた眠気に抗うことなく目を閉じる。
ズルさと弱さ、若干の妥協と目を背けたい真実に、二人はすぐに寝息を重ねること
が出来た……。
**――**
「ん、んぅ……」
目が覚めると、少し肌寒い。室内はクーラーでおよそ二八度に保たれているもの
の、全裸ではそれなりに辛い。
「重い……?」
左腕にある違和感とこそばゆい触感。そちらを向くと久恵がいた。
髪が汗でオデコに張り付き、時折痒そうに耳を掻く彼女はまだ眠っているのかもし
れない。
素面に戻ると後悔がやってくる。ただ、意外にもそれは大きくなく、歩も遅い。
理由はおそらく……。
「オハヨ……」
「あ、おはよございます」
「うん。うふふ……なんか変だね……」
「そうですね……」
「でも、もう大丈夫。夜遊びなんかしないから……約束する」
そういって彼女は小指を伸ばす。紀夫もそれに応じ、指きりをした。
「嘘ついたら……またしてあげる」
「したくなったら夜遊びですか?」
「イジワル……」
「だって……先輩」
――俺のこと……。
「今日からはまたキャプテンとマネージャーだね。ちゃんとできるかな?」
いつもの愛想のない笑い方と寂しそうな横顔。起き上がる彼女は彼を押しのけ、
シャワー浴びに行く。
「そう……ですか……」
昨日のあれは嘘のよう。だが、心は寂しくない。理由は一緒に朝を迎えたから?