……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-15
「先輩?」
「早く行きなさいよ。もうツマンナイし、送って行ってくれるんでしょ?」
「ええ、しっかり掴まっててください……」
再び自転車に跨り、ペダルを強く踏む。理恵を送ることで鍛えた脚は後の荷物をも
のともせずにスピードを生み出す。まだ人通りは少ないが、十五分ごとに来る電車を
考えれば表通りを通るのは得策ではない。
「少し遠回りしますけど……」
「うん。いいよ」
背中に寄りかかる久恵は理恵よりもずっと軽い。なのにペダルを漕ぐ足に力がこもらなかった……。
**――**
「ストーップ」
七階建のマンションを横切ったとき、久恵が叫ぶように言うので、反射的に紀夫は
ブレーキをきつく握り締める。
「きゃー」
慣性にしたがい滑らかに横滑りする自転車。悲鳴を上げてしがみ付く久恵を背に、
紀夫ははきふるした運動靴で目一杯踏ん張り、壁への激突を防ぐ。
「あはは、おどろいたー」
アルコールのせいか陽気な久恵は楽しそうに笑う。
「もう、先輩ふざけないでくださいよ」
「ふふ、あはは……」
肩を揺らし、しゃくりあげのような笑いの久恵は自転車を降りようとしない。
「先輩?」
「ん、今、降りるから……」
荷台から降りる久恵の上げた足の勢いがひらひらしたスカートを捲り、きつめの
ジーパンからはみ出る薄地のショーツが見える。
――白。
ヒールの高い靴には慣れていないらしく、「もう」と悪態をつきながら道端で脱ぎ
始める。
その間も街灯が照らす彼女の服の隙間。紀夫は悪いと思いつつ、目を逸らすことが
できなかった。
「ふぅ、いこっか」
「え?」
不意を突かれた紀夫は視線を誤魔化すこともできなかったが、久恵は気にする様子
もなく来るように促す。
「先輩?」
「私一人じゃ歩けないかも……」
それは足を捻ったためか、酔いのためか? それとも……。