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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-16

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 五〇五号室の表札には梨本友則、恵理子、久恵とある。
 時計を見るとまだ八時前。普段でも練習があれば帰りもこのぐらいになるだろう。
 けれど玄関からは明かりが見えない。

 ――共働きなのか。

 紀夫はそう納得した。

「あがってよ。誰もいないし……」

 先ほどの興奮も醒めたのか、久恵は風に乱れた髪を手櫛で撫でながら廊下をさっさ
と行ってしまう。
 ヒールの高い靴は脱ぎ散らかされたままで、通用靴はきちんと揃えられているのが
対照的。

「お邪魔します」

 几帳面な紀夫は自分の靴を揃えたあと、彼女の靴も揃え、その後を追った。
 薄明かりで照らされる居間にはソファベッドが二つ、テーブルを挟んでいる。

「何飲む?」

 久恵は高級そうな棚から褐色の瓶を出し、グラスと一緒にテーブルに並べる。

「いえ、別に……それじゃあお茶でもください」
「お茶? なに? あたしとじゃ飲めないとか?」
「あの、僕はお酒とか飲んだこと無いから……」
「だっさ……」

 心底つまらなそうな顔で呟かれると心に響くものがある。それでも言い返すのは待
つべきと、口を真一文字に結ぶ紀夫。

「えと、まあいいわ」

 久恵は台所へ行くと氷を山盛りにした皿と紙パックのお茶、それにミネラルウォー
ターを持ってきた。

「ありがとうございます」

 お礼を言う紀夫を無視し、久恵は自分のグラスに氷を入れると水を数滴たらし、次
に褐色の液体をゆっくりと注ぎ込む。
 すると部屋にほんのりと甘い香りが漂い始める。それは若干のアルコール分を含ん
でいた。

「先輩、お酒……」
「飲みたい?」

 好奇心は頷いている。
 だが、理性は?
 久恵がどのようなつもりで自分を部屋に招いたのは分からない。
 彼女の性格は生真面目でまとまりの無い部活をそれでも纏めようとする苦労人。

 それはあくまでも表の顔。

 裏では暇つぶしなのか、悟と准ずる行為をしていたり、街中で大学生らしきグルー
プとたむろしていたりと、一昔前の不良そのもの。

 ――先輩は……、本当にこんなことしたいのか? 楽しいのか? 違うよ。だっ
て、そんなの自然じゃない。つか、さっきから違和感ありまくり。変身願望っていう
の? そういう薄っぺらさがあるんだよ。

「それじゃ乾杯っと……」

 お茶とお酒での乾杯はグラスは合わせず、視線も交差せず。
 久恵はグラスに一口つけると目を細め、小さく喉を鳴らすとため息を着く。
 紀夫は黙ってお茶と彼女を交互に見つめていた。

 ――飲めないくせに……無理して強がってるのか? いや、きっとそうだろ。う
ん、そうだ。

 おかしな正義感に芽生えつつある紀夫は自分の解釈に間違いは無いと確信し、顔を
上げる。

「先輩!」
「あ、そうだマネージャー君、トイレなら台所の向いね。それと、結構臭うからシャ
ワー浴びてきなさいよ」
「はい……」

 ある種の覚悟を袖にされるどころか華麗に打ち消されてしまった紀夫は、そのまま
立ち上がり、言われたとおりにシャワーを浴びに行くことにした。


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