……タイッ!? 第四話「暴きタイッ!?」-10
「それはそうと、ほい!」
「え? うわ!」
振り返る紀夫の顔面に飛び込んできたのは日に焼けたカーテンとシーツが一組。
「なんですか? いったい」
「それも洗濯しとけ」
「そんな、僕は別に保健係じゃないですよ?」
わけも分からずわたされた洗濯物をくるくるまとめ、ベッドへと戻そうとする。
「コンドーム……」
その一言に紀夫の身体は硬直し、嫌な汗が流れだす。
クーラーは二十五度のエコ設定。レースのカーテンで陽射しを遮り、保健室は部室
棟などと比べて非常に快適な空間。にもかかわらず、今は針のむしろを被せられた気
分。
「いやさ、私もそういうこといったし、責めるつもりはないよ。でもなあ、ゴム代ぐ
らいはボランティアしていいんじゃいないか?」
「な、なんのことです?」
「言ってほしいか?」
「いえ、その、洗濯大好きですし、別にいいですよ? これぐらい……」
それだけいうと、紀夫はカーテン片手に振り返ることなく部屋を出て行った。
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保健室のシーツを片付ける紀夫とそれを手伝う理恵。
今日は陽射しが弱い代わりに風が出ていた。そのおかげでシーツ三枚も難なく乾
き、あとは片付けをしておしまい。
理恵も旧式の頃は自分で洗濯も出来たというだけあり、物干しロープからテキパキ
と働いてくれる。
「でも、なんでノリチンが保健室の洗濯してるの?」
「ん? ああ、綾さんや久恵先輩がお世話になったしさ、これぐらいは別に……、そ
れより理恵さん、練習はいいの?」
「ん? んー、なんかあんまり練習って雰囲気じゃないし……」
グラウンドのほうを見ると部員達は日陰でストレッチをしていたり、体育座りをし
ておしゃべりをしている。
暑さもそうだが、キャプテンの久恵がいないせいか、いつも以上にまとまりのない
部活に紀夫は首を傾げてしまう。
――ていうか、こういう時こそ顧問がしっかりしてくれないと……。
ピンクのジャージを探すも彼女はグラウンドの隅で携帯を弄っていて、その内容に
一喜一憂している。おそらく相手は年下の恋人だろうか?
「今日雨降りそうだし、早めに上がったほうがいんじゃないかな」
裾を掴む理恵は「今日も一人だし」と甘えた様子で近づいてくる。
「えっと、先生に聞いてみようか……」
その意図を察した紀夫は焦る気持ちを隠しながら、洗濯カゴ片手にグラウンドへと
走る。