あるカップルの休日-3
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『よし!じゃあ何から観ますかね!!』
「あれ、俺あれが良い。こないだ録画したばっかのやつ。」
『あー、これ?』
マジックで映画のタイトルを書いた、DVDをちらつかせる。
「そーそー、ずっと観たいと思ってたんだよね。あの監督すげー好き。」
それは、つい2.3週間前にテレビで初放映されたコメディの日本映画だ。
じゅんくんはその日バイトが夕方までだったが、私と一緒に観たいから、と録画して観なかったもの。
私はすぐにそれを、DVDプレーヤーにセットした。
私達が映画観賞する時は、ベッドで横にごろんとして観る、というのが決まってる。
ベッドから1m程離れた所にある薄型テレビをベッド側に向きを変え、じゅんくんはベッドの奥に、横向きに寝ころがる。そして、じゅんくんの左腕をまくらにして、私も同じように横向きになって、彼の手前に寝ころがるんだ。
これもいつの間にか定例化していた。
CMをスキップして録画している為、映画はどんどん進んでいった。
やっぱりこの監督、天才。
映画について批評を述べる程の知識はないが、私はもともと映画好きで昔からこの監督が好きだった。
台詞の有向な使い方や監督独特の間なんて、ホントに絶妙!!
『―――‥…。』
じゅんくんが私のおしり辺りをやんわりとさわり始めた。
スウェットの上から、太ももを触れるか触れないかギリギリの所だったり、ぎゅむ、とおしりを掴んだり。
最近、忙しすぎて忘れていた。そういえば私達は、もう3週間はしてない。
小さくて青い、でも決して消えない、火が灯ったような感覚に陥った。
そんな事されたら映画観る余裕なんてなくなっちゃうよ....
私はテレビに背を向け、じゅんくんと真正面になるようにからだを動かした。
一瞬だけ目が合う。だけど本当に一瞬だけ。すぐに目を閉じ、キスしてしまったからだ。
寝ている時にキスをしたり、されている事もあるらしいんだけど、お互い同意の上でのキスは久しぶり。
あー、やっぱりじゅんくんの唇はやわらかい。大すき。
ゆっくり、ゆっくり、今までできなかった分を全て取り戻すようなキス。
「千夏、映画は?」
両手で頬をやさしく包まれ、おどけながら言われた。
もー、わかってるくせに。
もー、そっちから誘ってきたくせに。