天使のすむ場所〜小さな恋が、今〜-1
私:可原 綾乃(かはら あやの)が、彼:速水 敦(はやみ あつし)と最初に出会ったのは短大生の時だった。幼馴染である理恵の高校時代の友達だって・・・聞いた。彼は、いかにもモテそうな顔で女の子に囲まれてたっけ。
絶対軽そう。
絶対こんなタイプいや。
そう思ってたのに・・・。今思えば、あの時点で本当は恋に落ちてた。私ってば、ホント面食いだ。でも、あの時は本当に本当にいやって思ってたんだと思う。いやって思ってたのに・・・恋に落ちた理由はひとつしかないんだ。
だって、彼が見つめる先に私がいたから。どこにいても視線を感じたから。そんなの、いやでも意識する。
話したくない。
合コンの最中、絶対に隣にならなかったのに。
帰り道、急に呼び止められた。
「ねえ・・・」
湿った空気が余計に胸を高鳴らせる。名前も呼ばれてないのに、自分が呼ばれたんだってなぜか思った。かなりの自意識過剰。(笑)振り向いたそこで、その日初めて彼と目が合った。私より頭一個分高い背、栗色の髪が無造作にセットされてて、月光に照らされる。整えられた眉の下には、女の子顔負けの大きな二重。鼻筋が通ってて、少し薄い唇が濡れてた。
きれい・・・って、なに私みとれてんのよっ?!相手は天下のプレイボーイ〈死語)よ?!
一人頭の中で葛藤してる私。そんなことを悟られないよう、視線を彼の足元に落とした。
「ねえ、・・・あのさ。突然なんだけど・・・。」
顔を背ける彼。微かに頬が赤く染まってるのは・・・お酒のせいだよね?それとも・・・。
「こんなこと、突然すぎて信じてもらえないと思うけど。結婚してください・・・」
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・?。
「・・・ってやべぇ!間違った!!!っていや・・・間違ってないってゆうか、えっと、あのそれはそのうち・・・って、あれ?えっと、違うんです、えーと・・・。」
心臓が、一瞬止まった。こんなことってありえる?今なんて言った?ありえないでしょ?もう・・・からかわれてる、絶対。
「あの、冗談やめてくれま・・・!」「冗談じゃないんだ!!」
私が怒鳴るのを遮って、彼が大声で言った。そして、一呼吸おくと、
「一目惚れなんだ。こんなこと、信じてもらえないと思うし、俺も初めてで・・・でも、どうしても今日いわなきゃって。っていうか、酒の力借りねぇとこんなこと面と向かって言えないから。お願い、信じて?」
あの時の彼の顔は、まるで捨てられそうな子犬みたいに見えた。嘘みたいな告白。普通なら、軽くあしらう私なのに。この時だけは、身動きが取れなくて・・・気づいたら、彼の手を握っていたんだよね。あれから・・・