イライラ風船-4
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『…本当に、風船が割れるときみたいな音がしたんだよ。』
スズキは、今日初めて会った転校生の女の子に何気なく昨日の話をする。
『やだぁ、何それ。』
可愛らしいその子は苦笑いを浮かべた。
スズキは彼女と思いの外仲良くなり、一緒にお弁当を食べている。
『まさか本当に転校生が来るとは思わなかったけれど、君が痩せていてほっとしたよ。』
スズキが冗談めかして言うと、彼女も怒る真似をした。
『ちょっとぉ、それって軽くセクハラ発言だよ?』
ごめんごめん、と笑いながら言い、スズキはお弁当の林檎を食べる。
---ふと、林檎が刺さっていた楊枝を見た。
唐揚げを箸に挟んで持ち上げた彼女の柔らかそうな手に、スズキは思い切り楊枝を突き刺した。
ぱん!
昨日と同じ音がして、彼女は破裂した。
唐揚げと橙色の箸が地面に転がり、からん、という乾いた音が鳴った。
『やっぱり、もっと話を聞いてもらえば良かったな。』
スズキは少し後悔した。
ゴムのように広がった彼女の破片を丁寧に集めて、スズキは彼女の持ってきたお弁当箱に入れる。
そのお弁当箱を食べる前と同じように布に包んで、授業に向かう。
『そういえば、次の授業は小テストがあるんだっけ。』
スズキは舌打ちをして、楊枝をゴミ箱に投げ入れた。