イライラ風船-2
***
『あぁ、どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。』
『そうですねぇ。』
『あんな仕事、僕にやらせるなよ。』
『本当に。』
『あいつら、分かってないんだよな。』
『なるほど。』
『なんであそこに突っ立ってんだ、邪魔だってのが自分で分からないのかよ。』
『全くですね。』
『あいつが出来もしないことをやろうとするから、こっちにまで飛ばっちりが来たよ。』
『お気の毒です。』
『あのやり方じゃ駄目だ。僕の言う通りにやれば、もっとスムーズに進むのに。』
『スズキさんの言う通りです。』
『全く、スズキさんの言う通りです。』
***
その日、スズキが部屋の扉を開けたとき、少しばかりの違和感を覚えた。
いつものように座っているヤマダの姿が、最初の頃と少し違う気がしたのだ。
少し、丸くなったか?
『どうしたんですか、スズキさん。』
スズキはヤマダの言葉を無視して鞄を机に置いた。
気のせいか…。
『今日は何かありましたか?』
『毎日ムカつくことばかりさ…。』
---毎日、同じことの繰り返し。
次の日も、スズキは自室の扉を開けてヤマダに愚痴をこぼしたが…。
『…おい。』
『なんですか?』
『お前、ちょっと太ったんじゃないか?』
スズキが、さも鬱陶しいという顔でヤマダを見ると、ヤマダは少し困ったように微笑んだ。
『仕方ないんですよ。』
仕方ない?
どういうことだ?
スズキはほんの少しだけ、疑問を持ったが、すぐに興味を失った。
『まぁ、お前のことなんてどうでもいいや。
そんなことより、今日は最悪だったんだ。』
『それは、大変でしたね…。』