投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

なにげない一日
【家族 その他小説】

なにげない一日の最初へ なにげない一日 3 なにげない一日 5 なにげない一日の最後へ

なにげない一日-4

「今から?」
「一緒に行こ」

小さな手をとってトイレに連れて行くと、ギリギリセーフで間に合った。

「すごいじゃん、ヒロ!夜中にちゃんとおしっこ言えたね!」

褒めてあげると、こぼれ落ちそうな笑顔で私を見上げる。

「ヒ…、俺もうおっきいもん!」

自分の事をヒロと呼び掛けて、すぐに俺と言い換える。
そんな小さい事がたまらなく可愛いと思うなんて、私も結構な親バカだな。


改めて布団に入れて寝かしつけた。
六畳の部屋いっぱいに布団を敷き詰めて、そこに寝相の悪い子供達が好き勝手移動しながら寝てる。
完全に眠ったのを確認して、ようやくお茶を飲む事ができた。

いちいち幸せを感じているほど私達は暇じゃない。主婦は日々の生活でいっぱいいっぱいなんだ。
幸せになりたくて結婚したのに、今の自分が幸せかどうか私には分からない。
幸せになりたいなんて漠然とした願いは持っていない。だけど、もし望めるのなら、この嵐のような毎日がずっと続けばいいと思う。
誰一人欠ける事なく、この子達とずっと怒ったり笑ったりできたらいい。

憎たらしくて生意気で、悪いところをあげたらキリがない。それでもこの子達のいない世界は、不幸なんてもんじゃない。
きっと地獄だ。

机の上には開きっ放しの国語辞典。
441ページ。

どうせ使わないからいいよね。

右から二つ目の"幸せ"の意味に赤ペンで大きくバツをつけて、背中で子供達の寝息を聞きながら余白にその意味を書き直した。

『なにげない一日』と。



雑談BBS・1192作ろう小説で!参加作品


なにげない一日の最初へ なにげない一日 3 なにげない一日 5 なにげない一日の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前