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なにげない一日
【家族 その他小説】

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なにげない一日-3

連日テレビから流れてくる母親による子供への虐待のニュース。
正直、殴ってしまう親の気持ちがよく分かる。
何も考えなくていいなら私だって今頃子供達をボコボコにしているだろう。

虐待する親としない親は紙一重。
それをしたらどうなるか分かっているからしないだけ。

しばらくすると、奥の部屋から三人の笑う声が聞こえてくる。
ついさっきまで喧嘩してたのに…、そう思うと自然にこっちの頬もゆるんだ。




炊事が済むと、次は夜の大仕事が待っている。
子供達に夕飯を食べさせて風呂に入れて歯を磨いて寝かしつける。
それさえ終われば自由時間。
でもそれまでが怒濤の三時間。
こっちの怒りも忙しさの波に乗って膨れ上がる。早く自由になりたいのになれない歯痒さでイライラもヒートアップ。
子供全員が眠るまでに何度怒鳴った事か。
そりゃシワも増えるわ。



旦那が帰って来るまでまだ時間がある。一息つこうとお茶を入れて座椅子に腰掛けると、机の上には長男の国語辞典が置き去りにされていた。

片付けろって言ったのに…

やれやれ、また明日の朝一で叱らなくちゃならない。

「…」

昼間の主婦友の言葉をふと思い出して辞典を開いた。

「主婦の幸せ、か…」


幸せ(名・形動)
十分に満足している状態。幸福。


「…ふっ」

鼻で笑ってしまった。
十分に満足している状態だぁ?
そんな主婦いるか?
正解の分からない育児に追われて、誰も褒めてくれない家事に追われてさ。
成長途中の育ち盛りの子供達に対しての悩みは尽きない。
幸せなんて形のないものをたった数文字、一行で表してんじゃないわよ。


「…お母さん」

寝室から眠ったはずの三男の声が聞こえた。

「へ!?」

襖を開けて中を覗くと、豆電の薄明かりの中にぼーっと立って

「おしっこ」

ぽつりと呟いた。

「えぇ!?」

慌てて布団から下ろした、が、そこに染みはなく、おまたを押さえてもじもじしてる。


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