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操れるかも! 操られるかも!?
【その他 官能小説】

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操れるかも! 操られるかも!?-1

第1話 『それはくちづけから始まった』


 その時、俺の視線は部屋の一点を見つめたまま動きを止
めていた。

 俺の視線の先に存在するもの……
 大きな窓から差し込む陽光に白く輝くダブルベッド。
 そこに横たわる一糸まとわぬ白い肌の女。
 その二つが作り出す本来ほの白く幻想的でさえあろう空
間に、不釣り合いに存在する俗世そのものを表現したかの
ような浅黒い肌の全裸の男。
 その一組の男女のみが、寒々とした白い壁の部屋に似合
わぬ熱さを放ち続けていた。
 目を離すことが出来ずにいる俺の身体も熱さを覚えてき
ている。

「あっああん、あん、あん、あん」
 男の腰は女の白い太股の間に深く沈み込み、その動きは
女の大きな乳房を激しく揺さぶる。
 女の脚は次第に、男の背中へと登っていく。
 俺の目は男の腰と、女が脚を上げたためあらわになって
いるお尻のその中間の部分に釘付けになるが、どうしても
よく見えない。

「ああぁ、ああ、ああ、あんあんあん」
 男は女を四つん這いにさせると白く豊満なお尻をがっち
りと掴み、その疲れを知らない腰の動きで女の芯を背後か
らえぐっていく。
 女のお尻が男の腰で力強く叩かれ、大きさを増す卑猥な
水音が激しくなってきた女の声に負けずにその存在を知ら
しめる。
 俺は喉の引きつりを覚えながらも目を見開き耳を研ぎ澄
ましてその空間に没頭する。

「ああ、ああ、ああん、ひっ、ああ、ああ、ああ」
 男の腰の動きはさらに早く、力強く女を絶頂へと追い詰
めていく。
 激しく前後に揺れ続けている女は与えられ続ける快感に
顔を赤く染め、口元はだらしなく開き、声は引きつり、目
線は宙をさまよった。
 速さを増す胸の動きは淡い乳首の色を白い乳房に溶けこ
ませる。
 男の腰に叩かれ続けているお尻は赤く色づき始め、二人
の結合部から聞こえる水音はどんどん大きくなってきてい
る。
 俺の興奮も昂まり続け、自らの股間へと伸ばしていた右
手の動きが速くなる。

 そしていよいよ最後の瞬間を迎えようとした時……
 コンコン
と俺の部屋の扉をノックする音。そして少しの間も置かず
「圭一、大事な話がある。入るぞ」
と言いながら俺の返事を待たずに親父が部屋の中へと入っ
てきた。
「圭い……ち……」
 俺の姿を一目見た親父はそこまで言ったところで固まっ
てしまった。
 その時の俺はズボンを膝まで下ろし右手で自分のモノを
がっちり握ったままの格好で、突然の来訪者に固まってし
まっていたのだ。
 しかし沈黙は一瞬だけで、俺の姿と今まさに男が吐き出
した白い液体を胸に受けて小刻みに震えている全裸の女が
映るテレビ画面に交互に目をやった親父は
「さすがは我が息子。十八歳になったその夜にアダルトビ
デオで抜いているとは、実に頼もしいかぎりだ」
と笑顔で俺の肩を力強く叩く。
「……うるせぇ」
 俺はズボンを慌てて履きながら親父を睨みつける。
 しかし親父は構わずに話を続ける。
「そんなすけべぇなお前に父から素晴らしい誕生日の贈り
物をしようではないか」
「……なんだよ」
 俺はその時初めて親父が紙袋を持ってきていることに気
づいた。
「ふふふ……それはな……」
 そう言いながら親父がガサガサと紙袋の中から取り出し
たのは……

 まっすぐ伸びた黒髪が美しい……かつらだった。
「……」
「さあ圭一、これをかぶれ」
「……おい」
「お前は母さん似だ。きっと似合うぞ」
「おいっ!」
 俺は血の気が上っていくのを感じた。
「おい、これが俺への誕生日の贈り物だってか?」
 俺は努めて冷静さを取り戻そうとしながら机の椅子に座
り頬杖をつく。
 親父は表情を一切変えずに言葉を返す。
「誰がそう言った?」
「……」

 俺『斉木圭一』は親父『斉木勲』と何かとどうも噛み合
わないでいた……と言うよりは親父の言動の不可解さが問
題なのだと俺は考えている。
 俺は親父が感覚的にどこか普通ではないという思いを子
供の頃から常に持っていた。
 特に俺が中学生になって間もなく母親が病死してからの
親父はいっそう変になった感じがした。
 はっきりどこが変わったとも言えないのだけれど。


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