操れるかも! 操られるかも!?-24
パタパタパタ
とスリッパの音が大きくなってくる。
追い詰められていく俺は大きな声で叫んでいた。
「美奈子、ストーップ!」
すると足音はピタッと止まった。
「……!?」
「……圭ちゃんでしょ!? なんとかしてよぉ!」
扉の向こうから美奈子が話しかけてきた。
「あ、ああ、どうした」
「どうしたじゃないよぉ! 動けないじゃない!」
「は?」
「この間から、圭ちゃんに命令されると体が言うこときか
なくなってるのっ!」
……ああ、そういえば美奈子を『力』から解放した覚え
がない……そうだ、これならこの窮地をしのげるかも。
「……ああ、そうだったな。ちょっと待て、由希子さんに
飯を食わせてもらってたんだ」
「それでなんで私の動きを止めるのよぉ!?」
……そりゃそうだ。う〜ん、どう言ったらできるだけ怪
しまれずに美奈子を追っ払えるだろう……
「……美奈子、大介のこと、好きか?」
「えっ!?」
「俺よりも大介が好きかって聞いてるんだけど……」
「……」
「……答えろよ」
「……圭ちゃんは、いいの?」
「……」
「……圭ちゃんは、許してくれるの?」
「許すも許さないも……美奈子が本当に好きな人を選んで
ほしいと思ってる」
「……ごめんね……私、大介ちゃんの方が……」
……わかってるよ。そう言うと思ってたよ。そう言って
くれると今は助かるよ。などと思いつつ
「……そうか……」
「……」
「大介は鈍いから、なかなか思いは伝わらないぞ」
「……そうだね」
「美奈子の方から積極的にいかないと」
「……わかってる」
「……なら話は早い」
「……え?」
「今すぐ、そこの玄関から大介の家までいって来い!」
「な!? ちょっと!?」
スリッパの足音が玄関へ向かった。
「ちょ、ちょっと! だめ!」
「美奈子! がんばれよぉ〜っ」
「だめぇ! 私っ、ぱじゃまあああああ……」
美奈子がそこまで叫んだところで玄関のドアが開いて足
音は出ていった。少しすると自転車が走り去る音が聴こえ
てきた……
……あっ、そうか……トイレに起きてきただけなんだか
ら寝間着のままだよな……気づかなかったな……
振り向くと由希子さんがくすくす笑っていた。
「ふふっ……圭一君が力を使うところ初めて見た」
由希子さんは『力』のことを知っているようだ。まあ、
親父と関係があることを考えると不思議ではないが。
「……知ってたんですか? 斉木家の力のこと」
「うん、圭一君のお父さんから聞いたことあるわ。実際に
使ったのも見たことあるし」
「親父はどんなことに使ったんですか?」
俺がそう言った後の由希子さんの顔にはいたずらっぽい
笑みが浮かんでいた。俺はなんとなく想像がつく。
「……聞きたい?」
「いや、遠慮しときます」
「あら? どんなことかわかったの? もしかして美奈子
にそういうような使い方した?」
「……なんのことでしょう?」
「ふふっ、まさか千佳ちゃんにも、とか?」
「……」
「でも……あんな使い途もあるのねぇ、美奈子には悪いけ
ど笑っちゃったわ」
「夜中とはいえ寝間着で外出させたのはまずいかな……」
「あははっ、圭一君、大丈夫よ。あの子、子供服みたいな
パジャマだから。自転車に乗っていったみたいだし、大介
君の家もそんなに離れてないし、ね?」
そう言いながら俺の頭を優しく撫でる。
「う、うん……」
「……美奈子も、圭一君も、大介君も、少しずつ成長して
るんだね……」
「え?」
「……私もまだまだ成長していく途中なんだろうな……」
俺の頭を撫でる手が止まる。手の暖かさがはっきり感じ
られて心地いい。
「……私だけ時間を早く進めたがっていたみたい……」
「……?」
由希子さんは一瞬うつむくとすぐ顔を上げ、その場に膝
をついて俺の股間の萎んでしまっているものを口にくわえ
る。