操れるかも! 操られるかも!?-22
第8話 『由希子さんの復讐』
由希子さんと俺はかなり長い時間、お互いの唇の暖かさ
を確かめあっていた。
由希子さんが潤んだ目をして唇を離すと、二人の唇の間
から雫が床へと落ちた。
「ごめんね、圭一君……勝手なお願いで……」
「え? い、いえ、その……」
「美奈子なら大丈夫……あの子いつも覗いてばっかりいる
もんだからこの時間はいつも寝ているの。それで夜中にな
ると起きるようになっちゃってるの」
「……」
俺は美奈子なら十分ありえる話だな、と思った。
「それに圭一君のお父さんが来るのはいつも真夜中だから
まだ時間はたっぷりあるわ」
俺は親父の顔が浮かんで少々後込みする。
その様子に由希子さんが口の裏で笑う。
「ふふっ……気にしないで。まだ私とあなたは親子なんか
じゃないんだから……今はまだ赤の他人……どこにでもい
る男と女にすぎないわ……」
由希子さんが再び唇を重ねてくる。
『他人を自由に操る力』を持っているのは俺の方のはず
なのに、俺は催眠術をかけられたかのように由希子さんの
舌を求める。
「……んふ……ん……」
由希子さんは俺の背中を強く抱きしめて唇を重ねたまま
最も近くにあったテーブルに横になる。
由希子さんに抱きしめられてる俺は自然由希子さんに覆
い被さる形になった。
我慢が効かなくなった俺の手がエプロンの上から由希子
さんの胸を掴む。
由希子さんは瞼を少し赤くしながら微笑んで、俺の下で
スカートとショーツを一緒に下ろしていく。
「私ね、圭一君のお母さんも好きだった……」
「え?」
「長い髪がとてもきれいで、笑顔が可愛らしくて、それで
いて芯が強くて、私の憧れだった」
「……」
「圭一君のお父さんとお母さん……私にとってはどっちが
欠けてもいけない、理想の夫婦像だった……」
「……」
由希子さんの手が俺の手を太股の内側へと導く。
「……あなたのお母さんがいけないの……あの人を置いて
さっさと逝ってしまうから……」
俺は由希子さんの中に指を侵入させる。
「くふっ……圭一君って本当によく似てる」
由希子さんはエプロンを外すと俺を再び抱きしめる。
「ふふっ……陽子さんを抱いてるみたい……あっ」
俺の指が由希子さんを責めたてる。熱い液体が太股へと
次々に流れだす。
「あっ……陽子さん……怒ってる? 勲さんに抱かれる私
が、うあっ、に、憎い?」
俺は少しずつわかってきた。由希子さんにとって俺は、
俺であって俺ではない。俺は斉木勲の子供であり斉木陽子
の分身でありその二人を兼ねた存在なのだ。
俺に向けられた由希子さんの優しさは、俺という存在を
理解しながらも俺を通して二人の存在に向けられていたも
のだったのだ。
俺は由希子さんと密着しながらなんとも言えない寒々と
した気持ちになってきた。
俺は由希子さんの舌を吸い、身体を力強く抱きしめ、太
股の間に沈ませた指の動きを荒々しくする。
「あっ、もっと私を責めて! あの人が悔しがるくらい、
私を乱れさせて……ああっ!」
俺はセーターを脱がせ、由希子さんをブラとソックスだ
けにする。その間、俺は一言たりとも発することができず
にいた。
俺は由希子さんの下半身に顔を埋める。舌が由希子さん
の体内から溢れ出るジュースをいくら拭っても、由希子さ
んはさらに器一杯にジュースを継ぎ足す。
俺は下半身だけ裸になった。その中心のものは既にそそ
り立って行き場を求めている。
「……じゃ、いきます」
俺は低く冷めた声で由希子さんに告げると、返事を待た
ずに腰を進めた。
ぶじゅう、という湿った音がかすかに聴こえた。
「あ……うふっ……繋がってるぅ、繋がってるのぉ……」
俺は始めから腰を強く速く叩きつける。
そこには由希子さんへの怒りが多分に込められていた。