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操れるかも! 操られるかも!?
【その他 官能小説】

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操れるかも! 操られるかも!?-21

「この間、夜中に喫茶店に来てたでしょ?」
「い、いえ、その……」
 やはり由希子さんは苦手だ。俺のことなんか全てお見通
しのようである。
「ま、この前のはいいわよ。不問に伏してあげる」
「ご、ごめんなさい」
「だから、いいって言ってるのよ。ちょっといい気分だっ
たし」
「は? いい気分?」
「……圭一君、お母さんにそっくりだよね……あの人が今
でも愛してる……」
 そう言いながら由希子さんが俺の顔を細い指先で撫でて
くる。俺は少しだけ心臓の鼓動が早くなる。
「圭一君じゃなくて、圭一君のお母さんに見せつけてる気
分になって……よかったの……」
 ……よかったのって……それはちょっと刺激が強い……
「あ、あの……由希子さん……」
 由希子さんはテーブルの上に突っ伏してため息をつく。
「……私……いつまでたっても二番目なのかな……」
「……二番目……」
「そう、二番目の存在……あの人にとって」
「……」
「一番の存在になりたくて……ずっと頑張っているのに」
 俺は常に大介の次の存在で居続けた自分のことを言われ
ているような気になる。相手が俺を見通しているかのよう
な由希子さんだとことさらに……
「だ、大丈夫だよ。きっと……いつまでも二番目ってこと
なんかないよ」
「……本当にそう思う?」
「ほ、本当に……そう思わなきゃ!」
 由希子さんは伏した姿勢のまま上目遣いで俺を見ていた
が、その言葉を聞くと、くすっと微笑んだ。
「じゃあ、圭一君も頑張ろうね」
 俺の頭に由希子さんの手が伸びる。髪の毛越しに感じる
手のひらの暖かさは、由希子さんを本当の母のように思わ
せる。
「う、うん」
 俺はもう頷くだけだった。

 由希子さんがこの時どれだけのことがわかっていたのか
は俺にはわからない。
 それでも由希子さんと話して俺の気持ちは信じられない
ほど軽くなっていた。

「それじゃ、ごちそうになりました」
 俺がそう言って席を立って、住宅の玄関に向かってカウ
ンター横の扉へ歩き出した時、
「あ、ちょっと待って! 圭一君」
と、後ろから由希子さんが追いかけてきた。

「圭一君、私のお願い……きいてくれるかな……」
 由希子さんがさっきまでよりも小さな声で話しかけてき
た。
「お願い?」
「うん……ちょっとした……復讐、かな?」
「復讐……って」
「あ、誰かを傷つけようとか、そんなんじゃないの。ただ
私の頭の中だけでの……復讐……」
 そう言う由希子さんの目は俺の方を見ているものの焦点
があっていない。さっきまでの優しい雰囲気もなくなって
少しだけなんとも言えない怖さが感じられる。
「頭の中だけの復讐……?」
「そう、お母さんにそっくりなあなたを……少しの間だけ
私の物にすることで果たせられる……あの人へのちょっと
した復讐……」
 そう言うと由希子さんの両腕が俺の首へと巻き付いてき
た。由希子さんは目を閉じ唇を重ねてくる。

 俺は由希子さんの唇の暖かさを感じながら呆然と立ちつ
くしていた。


 第7話 おわり


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