多分、救いのない話。-8--3
「いつ、撮ったんや?」
「見てれば分かるわ」
ぐるん、と景色が回転する。慣れていないのだろう、いきなりカメラが移動して、ずっとこの調子だと見ていると酔いそうだ。
しかし、がたがたという音と共に景色も固定される。
『よく考えたら、三脚にセットしてから録画ボタン押せばよかった』
画面の中で彼女がのたまっているがそれ以前の問題で、ズームが一番近くに合っているのか、先程から慈愛すら映っていないのだ。白い布、恐らくは服が景色の大部分を占めている。
ようやくセットが終わった。
待っていたのは、驚愕。
「な、」
『あなた、待たせたわね』
「なんで」
『こっちの準備は終わったわよ、あなた……慈愛』
「なんでこいつがいるんやっ!!?」
どうしようもなく、忌まわしく憎悪を掻き立てられる、二度と見ないと思っていた貌が、忘れられない貌が、いた。画面の中に。手の、届かないところに。
故に火口は声を荒げる事しか出来ない。
何もわからないまま、――ただ、起こってしまったことを見るしか出来ない。
また、間に合わなかったのか。
火口に肩を寄せている女は、画面の母娘は、しかし火口の驚愕にも恐怖にも興味はないと、いつものように、変わらぬ笑みを浮かべていた。