恋心に、イエス!-3
動作が自然だったせいか、私がこのひとをせんせいだとあまり認識していないせいか、なぜか触れられたことに違和感はなかった。混乱していたのかもしれない。
私はそのひとを拒絶する言葉を持っていなかった。
かといって積極的にお招きしたいキモチもなかった。
だけどその日からミヤせんせいは、毎日のように資料室へやってくるようになった。
そうしていつの日からか、彼は私の恋人になっていた。
-------------------
「ひなた」
うすいモヤの向こうで、誰かが私を呼ぶ。
この、こえ、は……
「ひなた、そろそろ教室に行かないと遅刻になっちゃうよ」
「んん……ぅ、ん……?」
あまーい声。私は少しだけ重い瞼を持ち上げて、でもまだふわふわ夢の中にいるような気分。優しい手つきで頭を撫でられているのがきもちいい。目の前のおとこのひとは、今日も穏やかに微笑みながら私を見ている。
「おはよう。どうしたの、寝不足?」
「……みやせんせ?」
「ミヤ先生」
にっこり笑って自分を指さしているのは確かに私の恋人であるそのひとで、ええと、なんだっけ、ああ、ミヤせんせいの黒髪は今日もゆるく波打っていて……気持ちよさそう……。
ぼんやりしながら手を伸ばして額の辺りのそのゆるゆるに触れたら、ミヤせんせいは目を細めて眩しそうに笑った。そうして、やわらかい口づけをくれる。
あまーいそれを目を閉じて受け止める。
ちゅ、と唇が離れて、それでようやく気付いた。
「……ん……ぁ、ああっ、わたし、寝てた!?」
「うん、なかなかぐっすりと」
「わああごめんね、寝るつもりじゃなかったのに……」
「いいよ」
「よくない」