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雪解け
【青春 恋愛小説】

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雪解け-1

「冬は 嫌いだなぁ」
じっと、窓の外を見ながらあたしは呟く。



雪が、降っていた。



朝から教室のストーブの周りに友達と集まる12月。だいたいいくら小さい教室だからって、40人もの若者を温めるのに古臭いストーブたった一つっていうのが間違ってる。
「やっぱあたしの季節は夏だと思う」
ただただ降り積もる雪を眺めながら、もう1度呟く。
「ああ、お前は確かにそんな感じ」
今さっき教室に入ってきたばっかりのその男子は、凍えて震えながらそういった。
あたしは少し動いて、そいつに暖かい風が行くように気を使う。
「夏姫(なつき)なんて、名前からして夏だろ」
サンキュってあたしに囁いてから、そいつは続けた。
「そういうあんただってそうでしょ。柊(しゅう)」
「だな。俺も名前のとおり冬好きだし」
「笑えるね」
「ほんとにな」
ふふって、2人して笑う。そんなあたしたちを見てクラスメートは、
「ほーんと、2人とも正反対なのに仲良しだよね」って笑った。

緒方柊。あたしと全く共通点が無い中で、この2年ずっと親友だった男。お祭り好きで騒がしいあたしと違って、友達と話してる姿もあんまり見ない柊。友達がいないっていうか、作らない。一人のほうが楽だからって、昔あたしに教えてくれた。あたしが友達とバレーなんかして遊んでる昼放課も、柊は生徒会室で毎日仕事してるし。まだまだ子供っぽさの残る中2のうちらの中では、そんな柊の存在が珍しいからか、ちょっと特別視されてる。他のサルな男子と違って女子にも優しいから、結構モテるって噂。最近も2組の永田さんが告ったらしい。永田さんとはそんなに仲良くないけど、何度か見たことはある。
「けっこう可愛いのに・・・なんでふったの?」
ある日あたしは柊に尋ねてみた。柊はちょっと苦笑して「そりゃ好きじゃないやつとは付き合えんだろ」って答えた。
そりゃ確かにって、納得。だけどあたしは「柊の好きなやつ」っていうフレーズにいまいちピンとこない。よっぽど美人で頭がよくて大人な人なんだろうって漠然としか考えれなかった。

あたしの恋愛経験はっていうと、2年の初めに1ヶ月くらい付き合った人がいただけで、それからはなんにもない。
「なんで別れたんだよ。あんな好き好きいっとったくせに」
前に1度、柊に聞かれたことがあった。
「好きだと思って告ったけど、付き合ってみたら思っとったのと違っただもん」
あたしはちょっと不機嫌そうに答えた。
「お前は恋愛に夢見すぎだから」
柊は笑いながら、あたしのおでこにチョップを食らわした。

そんな正反対なうちらは、中学になって初めで出会った仲だ。出席番号が隣同士だったこともあってか、よく話すようになって、いつからか携番も知ってた。自然な流れで名前で呼び合うようになって、いつの間にか相談ごととかもするほど仲良くなってた。そして気づけばあたしは、柊が好きだった

まぁ、柊からあたしへの感情は友達以外のなにものでもないって、分かってるけどね。


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