韻-5
「なんか…勢いに乗せた感じで告白しちゃってごめんね」
「ううん…」
「紅音ちゃんから“恋愛ネタ”で書いてっ言われて、よく考えたらチャンスだなと思ってさ…。だから自分自身の紅音ちゃんへの気持ちをリリックにしたんだ」
「うん…ありがとう。まさかラップで告白なんて…龍斗らしくて笑えちゃうけど」
「でもやっぱり恋愛でリリックを書くのは性に合わないや。これが最初で最後かな」
「なんかそれ、嬉しいな。だってMC龍頭の幻の一曲なんだもん」
「え、幻?」
「だって、最初で最後なんでしょ?」
「そうだけど、でも案外気に入ってるからもうちょっとアレンジとかミックスしてリリースしようかと思ったんだけど…」
「ちょっ…それは…ダメ!」
「えーっ…」
「だってバッチリ私の名前入ってるし…」
「だからいいんじゃん。タイトルも“Dear 紅音ちゃん”にしてさ」
「冗談キツイよ!何よそのタイトル!」
「そんな…」
「とにかく、これは私と龍斗の思い出の、記念の曲なんだから。だから二人だけの物で終わらせよう?」
「うーん、じゃあそうしましょうか」
「そうっ、そうしましょっ」
その後龍斗はこのインストトラックに友達のスタジオを借りて改めて声を乗せ、アレンジ、ミックス、最終的なマスタリングも処理して、世界に一枚だけのCDとして私にプレゼントしてくれた。
その仕上がりには目を見張るもので、本当にこのままリリース出来るレベルに。
だけど…これは私だけの幸せ。
私が辛い時も悲しい時も嬉しい時もどんな時でも、私を高揚させてくれる魔法の音楽。