韻-3
高校の頃から龍斗には憧れていた。
だけどお互い付き合うようなことはなく、それぞれ彼氏彼女がいた。
だけど一番腹を割って話が出来たのは龍斗で、龍斗にとっても私がそんな存在だった。
だけどタイミングも合わないし、龍斗から告白なんかしないし私からも告白なんかしないし…。
お陰で私がどれだけ歯痒い思いをしたことか…。
と、一週間経って龍斗からメールが。
“この前のテーマでリリと簡単なトラック作ったから、聴いてみて”
だって。
さすがは龍斗。
これは聴きに行くしかないね。
龍斗宅。
「あ、いらっしゃい」
「お邪魔しまーす。…あれ?お香焚いてる?」
「あぁ、義斗に貰ったからさ」
「お兄さんに?あっ、そういえばお兄さんお香が趣味って言ってたもんね」
「そうそう。お陰で俺もハマりそうだなぁ」
「うん、いいと思うよ。いい香りだし」
「でしょ?……で、そうそう。曲なんだけど」
「あっ、出来たんでしょ?」
「まぁねぇ。トラックはMPCで軽く打ち込んで作っただけだからショボいかもしれないけど。あととりあえず少しピアノのネタも入れてみたんだ」
「ピアノ?珍しいねぇ」
「まぁ仮にも恋愛モノだから。いつもと違って綺麗な感じで。まぁじゃあ、聴いてみてよ。3分ちょいで短いんだけど」
「うんっ」
イントロが流れる。
タイトなドラムビートに太いベース…そしてピアノ……。
簡素だけど、綺麗。
こういうトラックも作れるんじゃん…。
そして龍斗の…いや、MC龍頭としての生のラップ。
ラップをする時だけ少し低くなる、この声が好き…。
…確かに…あぁ、恋愛モノだ。
だけど捉え方が独特というか…いわゆる恋愛モノではない、龍頭らしい描かれ方がされてる。
案外、イケるじゃんっ。
って…えっ?