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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈国王篇〉前編-4

「とりあえず対象者を第3会議室に集めてくれ。時間は2時間後とする。命令は以上だ。全員下がれ。」

「はっ!」

サルスの命により兵士達は一斉に走り去った。少しずつ遠くなっていく足音に耳を傾けながら、サルスの拳は強さを増して握りしめられていく。こんな事をしても何の意味もないのかもしれない、無駄な事かもしれない。それでも何もないよりマシだった。

攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ。今は防御できる術が1つもないのが正直なところ。この城とて要塞に成り得なかった。

砦のない場所で武器を持って固まっていたところで何も守れやしない。こんな時、彼がいてくれたら。

「聖…。」

拳を握ったままの右手は、打ち付けるように額に当てられた。固く閉じた目、やるせない気持ちが表情に出ていた。

この状況下に陥り、戦力を失ったのは痛いどころではなかった。聖の安否は確認されておらず、行方不明となっている。血まみれの双子の妹・紅奈を抱きかかえ、自身の血か返り血か分からないが彼自身も血まみれの姿で歩いていたのが彼の最後の目撃情報だった。

何か目的があって姿を消しているならいい。もし命を落としていたら。そう考えるだけで不安で胸が押しつぶされそうになる。今回の襲撃事件で何人もの行方不明者や犠牲者の名前が提出された。そこには自分に近い人物も少なくはなかった。聖も紅奈もナルも、そしてセーラも名前が記されている。



セーラと名乗っていたリュナの側近であるレプリカ、彼女は自分と関わったばかりに深い傷を負い今も生死の狭間を彷徨っている。サルスは自分責めずにはいられなかった。血だらけのレプリカをみたリュナの顔が頭から離れない。

時折、言い様のない恐怖感で押し潰されそうになる。額に強く押しあてられた手をゆっくりと下ろした。それでも表情は厳しい。

「サルス。」

名前を呼ばれて我に返った。気やすくそう呼ぶ人物が少なくなった今では名を呼ばれるだけで安心してしまう。しかも今、名前を呼んでくれたのは彼の唯一の血縁者であるカルサなのだから尚更だった。

サルスは呼ばれた方に体を向けた。予想どおり声の主がカルサだった事に安堵から笑みがこぼれる。

「カルサ。」

「探したぞ、こんな所で何やってたんだ?」

そう言いながらカルサは少しずつサルスとの距離を縮めていった。カルサの影から貴未が顔を出して笑顔で手を振る。微笑ましい光景に促される様にサルスは自らの足で彼らに近づいた。

「武器の確認だ。あと確保もな。対魔物用に戦力強化しなければいけない。」

サルスは空の武器棚を指してカルサに見るように促した。それをきっかけに奥の棚まで目を通す。確かに武器が不足しているのは明白だった。

「鍛冶師と怪我の為に通常業務が困難な兵士をそれに当てようと思う。もちろん、治療優先の者は除外だ。」

「なるほどな。」

「魔物用に猛毒の塗料も用意させている。」

サルスはさっき兵士に指示した内容をカルサに報告した。さらにこれから動こうとしている城内警備の態勢見直しや、死者、行方不明者の確認作業を急ぐ事も合わせて報告した。


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