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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.She and I-4

Dear 賢悟くん
○月×日
同じ大学だね。でも緊張して話し掛けられないよ。私って小心者な女。ごめんね。


Dear 賢悟くん
○月×日
小百合から賢悟くんに私を紹介するって言われました。いきなりすぎて言葉もでないよ…
どうしよう。上手く喋れるかな。つまんない女だと思われないかな。めんどくさい女とか思われないかな。
どうしよう。どうしよう。どうすればいい?


彼女の手で記された俺への気持ち。


Dear 賢悟
○月×日
やっぱり私の事は覚えてないよね。
でもいいの。これからいっぱいいっぱい話して、賢悟に私の事知ってもらうから。
賢悟の事もいっぱいいっぱい話してくれると嬉しいな。


俺の知らなかった、彼女サイドの物語を見ているようだ。
あの時、こんな事を思っていたのか、こんな事があったのか、彼女はどう生きてきたのか子細は不明であるにしても、大まかな事なら全てがここに書かれている。

日記は進み、交際を経て妊娠、入籍と、彼女の物語も様々な困難を乗り越えながら、最終章まで進んでいく。

そして、あの日。
彼女の日記が記されてある最後のページ。


Dear 賢悟
○月×日
今日は綿貫の日です。忘れずに行って来たよ。順調ですって言われたので、後は産まれるのを待つばかり…だね。
ところで…、性別ばらしちゃってごめんね。私もばらすつもりはなかったんだけど、ばらしちゃった!
あの時の賢悟の顔、超傑作!!今度写メ撮らせてもらうから同じ顔してね。
それで…名前だよね。もちろん幸村だって悪くないよ。むしろスッゴくカッコいいと思う。私だけかな??
でも実は、私つけたいなって思ってる名前があるんです。恥ずかしかったから言わなかったけど…。
私と、私の愛する人の愛すべき子供って意味で、愛人(←まなとって読みます)っていうのはどうかな?
男の子に愛って可哀相かな?物心付いた時に、アイジンっていじめられるかな?うーん、どうしよう…。
私だけで悩んでも仕方ないっか。明日、勇気を出して言ってみるからね。笑わないでね?
明日も晴れるといいな。


途中から、視界がぼやけて読めなくなった。
日記を持つ手がぶるぶると震え、堪らず床に座り込んだ。
彼女の葬儀中は、忙しさのおかげで感じられなかったものが今、一気に増大して溢れてくる。
彼女の日記を見れば、そこには今も元気な彼女が生きている。なのに、この世に彼女はいない。
もう二度と会う事は出来ないんだ。
実感したくなかった現実を、今まざまざと実感した。滝のように涙が溢れて止まらない。
「うっ…うぅ…志穂…」
久しぶりに発する名前。
数日前まで絶え間なく呼び続けた愛する名前。
「志穂…、志穂ォ…」
彼女と過ごした日々。
人生の長さに比べれば、あっという間に過ぎてしまった微々たる日々。
その日々は、俺を大いに成長させ、幸せにした。
人は、人生の中で自分の幸せを模索し続ける。
人には人の幸せがあり、その幸せは百人いれば百通りの違う幸せの形があるだろう。
俺は、彼女との日々が一番幸せだった。
この先、俺の人生の中で、何度俺が幸せだと思おうと、これに勝る幸せには出会えないと思う。
本当に、本当に幸せだった。

…君は、俺といて幸せでしたか?
俺の独りよがりだったりしませんか?
俺は、君に伝えたい事が沢山ある。
ありがとうもごめんねもさよならもまた明日も、全てを君に伝えたい。

俺と出会ってくれてありがとう。
俺と出会ってしまってごめんね。
また会う日までさよなら。
また明日も会えればいいのにな。

「…志穂…、愛してる…」


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