超最強嫉妬彼女 前編-15
休み時間、次は移動教室なので生徒はどんどん出払っていく。
俺も教科書を持って教室を出ようとすると、本藤はまだ席についていた。
「…本藤、行かないのか?」
「…」
「ほら行くぞ」
本藤の腕を掴んで引っ張ったが、本藤は涙目で抵抗する。
「うーっ!」
ちょっと前の俺だったら、キレて放っておいたんだがな…なんか今ではキレる気にもならない。
俺は学校でしゃべる相手がこいつしかいないからなのか。
それはこいつも同じだからなのか。
理由はなんにせよ、放っておく気にはならなかった。
「本藤…あ」
何度か本藤の名を呼んで、さっきのことを思い出した。
とことんめんどくせえな、こいつは。
「……花耶、行くぞ」
「うんっ!」
即答!?
なんだこの変わり身は!
真っ赤な顔のまま、笑って準備する花耶。
こんな小さいことで、どうでもいい女相手に嫉妬するんだな、こいつは。
当の本人は、小さいことでもどうでもよくない女なのかもしれないがな。
***
放課後、夜の準備のために慌てて教室を出ようとすると、花耶に捕まった。
「公也、今日こそは一緒に帰ろ」
「無理だな」
「なんで?」
「今日は女がいるんだよ。お前、電話聞いてたろ」
「……やめなよ」
「……あ?」
「もうそういうの、やめようよ」
花耶は神妙な顔で言う。
いくらこいつでも、そりゃあないぜ。
「お前には関係ないだろ」
「あるよ」
何があるんだよ。
「……そうかよ。じゃあ俺が女遊びをやめたらお前は俺の相手をしてくれるのか?」
そう言って黙らせるつもりだった。
「いいよ」
赤い顔をして、花耶はそう言ったのだった。
***
結局、花耶を振り切って帰り、俺はミキとの待ち合わせ場所に着いた。
少ししてミキもやってくる。
「おまたせぇ」
ミキは派手な格好で、愛想笑いを振りまきながらいろいろな話を振ってくる。
「……」
めんどくせえ。
しばらく女と会わない間に、俺は考えが変わってしまったのか。
いつもなら俺も真面目に話を聞きながら、笑顔で会話を楽しむはずだった。
だが、なんだか気分が乗らない。
……やめなよ
「っ」
花耶の声が、聞こえた気がした。