ふつう-第九話-5
「鷹、今のって…」
「あぁ、賢先輩?」
「いつから知り合いなの?」
「二週間くらい前かな。俺がバイト帰りに公園で少しBMXやってたらさ、先輩がダンスやってて。見たことある人だったから声かけてさ」
「なるほど…。先輩、彼女いるんだね」
「○○高にね。あっちの友達に紹介してもらったとかで」
「ふーん。文化祭あるの?」
「うん。先輩もあっちのダンスサークルに混ざってステージ出るらしいよ」
「へーっ。すごいねー」
「パコも見に行こうよ。確か土曜だし」
「いいよー」
パコとは私の新たなあだ名。
“ツ”が飛ばされる始末。
「先輩が言ってた変わった人ってどんなんなんだろうねー」
「さぁなー」
「鷹くらい変わってんのかなー?」
「さぁなー。まぁ会えば分かるっしょ」
「そうだねー。……あ、じゃ私はここで」
「ああ」
「じゃまたバイトの後でねー」
「ああ。……あ、パコ、忘れ物」
「えっ?」
といって、抱き寄せられ、キスされた。
「ちょっ…もぅっ…」
「じゃまた後でな。ばいばーい」
「うん…」
一人赤い顔で、鷹の背中を見送る。
今日は私はバイトは休み。
一旦帰ったら、バイト上がりの鷹とまた合うんだけど…。
待ち遠しい。
付き合って暫く経ったけど、彼は未だに特別な彼のまま。
ここまで鷹に入れ込むなんて自分でも思ってもいなかったけど…。
早く帰ってきてね、私だけの“普通だけど特別な彼”。