ふつう-第九話-2
「パツ子はさ、俺にとっても特別なんすよ」
「…えっ?」
「だから、“普通”のクラスメイトではなくて“特別”なクラスメイトってこと」
「あ…あぁー……成る程…。あ、ありがとね…」
一瞬、“何か”を期待した自分がいたんだけど…。
「あー……そういうことじゃなくてさ…」
「……?」
「だからさ、特別なんだよ。友達とかクラスメイトとか、そういう人間関係のことじゃなくて、じゃなくて……俺がパツ子に抱いてる感情…が…ね」
「えっ…」
俯いてるからあんまり分かんないけど、鷹丸くん、顔赤い気が…。
「俺、自分からこうなったこと無いからさ…ちょっと自分でもよく分かんないんだけど」
「…けど?」
「その特別ってのは…パツ子のこと“好き”ってことなんだよ」
「え…」
え!?
「あ…えーっと…なんで!?だって私なんて……ほんとどこにでもいるような女だし…普通過ぎる凡人だし…」
「パツ子は自分のこと普通って言うけど、その普通が普通じゃないっていうか…」
「…?」
「だから、なんかそこまで普通に自然に接して来る人あんまりいなかったからさ。俺のクソくだらない話もちゃんと聞いてくれるし、自然に受け入れて。だからかな、パツ子の普通さは俺にとって特別でさ」
「…だって、鷹丸くんの話面白いから…」
「そう言ってくれる人、いなかったんだよね。“難し過ぎる”とか“よく分かんない”とかしか言われなくて。だからさ、初めてちゃんと受け入れてもらって。そりゃ、好きになっちまうわけだわ」
最後のはまるで自分に言い聞かせるかのような言い方だったけど…。
でも…届いてます…。
「あ…あのね…私、さっき嘘ついたんだ…」
「え?」
「“鷹丸くんは私にとって特別で、大切”ってとこ…」
「えっ!?あれ嘘っ!?」
「あ…じゃなくて、それは本当の気持ちなんだけど……実は、もう一つ忘れてたのがあって…」
「忘れてた?」
「うん……。あの…あの…鷹丸くんは…特別で、大切で…」