投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『Summer Night's Dream』
【青春 恋愛小説】

『Summer Night's Dream』の最初へ 『Summer Night's Dream』 4 『Summer Night's Dream』 6 『Summer Night's Dream』の最後へ

『Summer Night's Dream』その1-5

「…というわけで、今から君を食べることにしたから、とりあえず手を後ろに組んでそこに座って」


…これではまるで痴漢じゃないか。喉から出掛かった言葉を飲み込んで、陽介は代わりに


「何言ってんの、幽霊は君のほうでしょ?」


「わたし?」


少女がおぼろげに自分を指差した。


「まさか。私、自分んちからここに来たのよ」


「僕にだって家くらいある。母さんも、父さんも、じいちゃんも、みんなそこに住んでる。素麺はさすがにもう飽きたけど、明日は週末だからカレーが出るかもしれない」


つまり、何がいいたいのかと言うと、空腹の限界だった。


「僕はこの学校の生徒だよ。ここには取材で来たんだ」


そう言って、陽介は首から提げていたデジカメを少女に見せた。少女は手に取ってまじまじとそれを見つめ、


「これ、カメラなの?」


「そうだよ。中にいくつかここの写真が載ってるだろ?僕の入ってる部活で、よく使うんだ」


陽介の持ってきたカメラには、横にでっかく『超研』と書かれたテプラが貼ってある。
落ち武者のいる公園も、赤ん坊の夜泣き声が聞こえる駐車場もちゃんと入っている。中には、病院の女子トイレを撮った写真なんかも紛れ込んでるから、それは見ないでほしい。


「君はどうしてここに?」


パチリ、とシャッターの切る音がした。


「アナタと似たようなものよ」


カメラから視線を外して、少女がにこりと笑った。


「目に見えないものを、探しにきたの」


少女は自分のことを、本庄さくらと名乗った。
どこかで聞いたことがあるような気がするのは、たぶん、気のせいだろう。


『Summer Night's Dream』の最初へ 『Summer Night's Dream』 4 『Summer Night's Dream』 6 『Summer Night's Dream』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前