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『Summer Night's Dream』
【青春 恋愛小説】

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『Summer Night's Dream』その1-4

「どうだ。日向」


水嶋は悪戯っ子が何かを企んだような顔をして、陽介の前でひらひらと写真を揺らした。

陽介が「はい?」と聞き直す。


「右手には謎の写真、目の前には噂の旧校舎、そして俺達は今、ここにいる」


「はい」


「ちょっと、ワクワクしてこないか?」


「…いや、まあ、それなりに」


夏休み最初にして、最大の宿題が陽介に与えられた7月20日の出来事だった。



どこか遠くで犬が吠えている。
雲が増してきた夜空を見ながら、明日は雨だな、と的はずれなことを考えていた。

カビ臭い湿気の残る部屋。
右だか左だか分からない暗闇の中。
なぜかそこだけは真新しい備え付けのテーブルと椅子。
周りにはとりつく島もない蔵書の森。


そして、一人の女の子がいる。

目を凝らして、陽介はもう一度少女を値踏みした。
かなり古いタイプだが、着ているのはこの学校の制服のようだった。きっちり切り揃えられた前髪の奥から、真っ直ぐに見つめる大きな瞳がしきりに瞬いている。
全体的に言えば線は細い。細いのだがよく見てみれば、ちゃんと出てる所は出て、


「…ねえってば。聞いてる?」


いきなり耳元でそんな声を聞いて、陽介は我に帰った。


「え?」


「何度も呼びかけてるのに反応しないんだもん。あ、もしかして消えそうになってる?」


少女が何を言っているのか分からず、陽介が口をへの字に曲げて、


「どうして?」


と聞き返すと


「だってアナタ、幽霊なんでしょ?ここに住んでる」


女の子が有り得ないことを言ったので、陽介は当惑したまましばらく何も言い返すことができなかった。
そうなのか。僕って幽霊だったのか。知らなかったな。でも幽霊ってこんなに腹が減るものなのか。もし仮にそうだとしても、素麺ばっかり食ってる幽霊なんて格好悪くないか。
よし、今夜から自分は人間の生き肝を抜き取ってそれを食べる幽霊になろう。
出始めにこの女を、記念すべき最初の獲物にしてやろう。


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