官能の城(1)-4
この物語のその国は、正にそのような状況下にありました、
だからこそその当時の国々は栄えながらも次第に享楽に溺れ、
滅び衰退をしていったこういう新興の国々が多いのです。
しかし、全てがそうでなく、
その中でも全てにおいて堕落していったわけではありません、
中には謙虚で真摯に、しかも向上心が旺盛であり、
真に人々の幸せを願いそれに邁進していった人々が居ないわけではありません。
そういう幾多の困難な状況を経験し明暗のドラマを繰り広げながらも、
ゆっくりと本来の目的に進んでいく国もあったのです。
そこには、色々な、そして様々な人間が織りなすドラマがあるからこそ、
そこに燦然たる歴史上の偉大さ、
奥ゆかしさと更には深さがあるのですから。
まさに、この物語にはそういうドラマがあるのです、
物事には陽と陰があるように、
国にも、人の心の中にもそう言った物が存在しているのです、
それがあるからこそ人間が生きる上での悲しみ、喜び、怒り、
楽しみ等の醍醐味等があると言えるのです。
それを初めから分かる人など居りません、
あるとすればそれは唯一、全能の神とでもいうのでしょうか。
さて、背景を説明したところで、
お話が長くなりましたが・・先に進むことと致します。
どの国でもあるように、その国の明と暗、陰と陽があります。
一時期の国が隆起し発展していたときには目覚ましいものがありました、
しかし国が安定し低迷し始めると新たな問題が生じてくるのです。
それは一つには、
何処の国でもあるように
後継者争いという国家としてはリーダーの威力が衰退し、
新たなるリーダーを模索し始める頃には必ずと言っていいほど起こる問題なのです。
(4)
その国の王は、幾多の戦いの疲れが年齢の増加と共に出始め、
気力体力共に減退し始めていました。
そして当然ながら、
彼の後継者としては若干十七歳の王子が継承することになっていましたが、
しかしそれを阻む一派がありました。
その一派とは、
リチャード王子に対抗する一つのグループであり、
その中枢はなんと彼の母親のマーガレットと、
彼女の愛人である例の青年将校だったのです。
その彼の名前はクリスと言って名門の家柄の出でした。
彼は優秀な軍人であり軍の統率者としての器量があり、
勇敢、果敢であり容貌も優れており
その国の支配階級の婦人達からは憧れの人でした。
しかし、彼には誰も知らない大いなる野望があり、
それは後で分かってくることなのです。
その本心を誰にも明かすことはありませんでしたが、
いつの日にか、自分は登りつめ、
やがてこの国の征服者として君臨することなのだ・・
と思うようになったのです。
そのための努力を惜しむことはありません。
彼は、いつかその彼の欲求を満たすために
虎視眈々とその時期を伺っていたのであります。
彼が王の若い妃に近づいたのもそのためでした、
満たされない心を持つ若く美貌のマーガレット妃は、
そんなクリスに心身共に参ってしまいました。
マーガレットは初め寂しさに男を求めていたのですが、
やがてそんな野心を持ったクリスの手に掛かっては、
心も体も彼に依存しなければならないほど彼に溺れてしまったのです。