Lesson xxxU D-2
「征也、言ってたわよ。子供じゃ満足出来ないんだって」
足に力が入らなくて膝が抜けそうになるのを負けん気で踏張った。
絶対弱味を見せてなるもんかっ!
ちっぽけなプライドかもしれないけど、今はないよりマシだ。
落ち着いて考えるんだ。
榊先生がそんな事を南方先生に言うかどうか…。
一つ大きく深呼吸をして南方先生に対峙した。
「榊先生は絶対そんな事言わない。それに南方先生と関係するなんて有り得ない」
静かに、それでいて絶対揺るがない気持ちで南方先生に告げた。
私は信じてる。
私が私だから好きなんだって言ってくれた榊先生を。
子供っぽい思い込みかもしれないけどここで先生を信じずにいつ信じるの。
もし、榊先生が南方先生と関係を持ったんだとしたらきっと正直に言ってくれたはず。
でも先生はそんな事一言も言わなかった。
それはそんな事実がなかったから。
「子供にはわからない大人の事情ってものでしょ?」
嘲りを含んだ笑顔の南方先生は、何ていうか…全然キレイじゃなかった。
最初に見た時の印象が微塵もなくて、イヤラシイ大人の女の部分が透けて見える。
先生に起こった出来事がこんな風に変えたの?
それもあるかもしれないけど、きっとまだ…。
「南方先生ってまだ榊先生の事が好きなんだ?」
ストレートに訊ねると南方先生の目がすうっと細くなった。
「南方先生が元カノだって知ってるよ。そんな事言うのは私と先生を別れさせたいから?」
「あなたみたいな子供から征也を奪うなんて簡単な事よ?」
変わらず笑顔を浮かべてるけど、それは張りついたように強張って語尾も僅かに揺れていた。
「じゃあやってみなよ。無駄だけどね」
こんな人に負けるもんかって気持ちが沸々と湧いてくる。
私から宣戦布告されるなんて思ってなかったんだろう。
きっと子供だってバカにしててちょっと脅せば引くと思われてたんだ。
残念だったね、南方先生。
今まで何でもいい加減にして来てたけど榊先生の事になると別。
守ってみせる。
榊先生も、自分のこの気持ちも。